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  • 三浦綾子の「道ありき」の多変量解析-クラスタ分析と主成分5

    A平均1.0 標準偏差0 中央値1.0 四分位範囲0
    B平均1.4 標準偏差0.49 中央値1.0 四分位範囲1.0
    C平均2.0 標準偏差0 中央値2.0 四分位範囲0
    D平均1.0 標準偏差0 中央値1.0 四分位範囲0
    【クラスタABとクラスタCD】
    AB 平均1.2普通、標準偏差0.24普通、中央値1.0低い、四分位範囲0.5低い
    CD 平均1.5高い、標準偏差0低い、中央値]1.5普通、四分位範囲0低い
    【クラスタからの特徴を手掛かりにし、どういう情報が主成分なのか全体的に掴む】
    A、C、Dのバラツキが小さいことから、作者の考察は一定している。
    【ライン】合計は、言語の認知と情報の認知の和を表す指標であり、文理の各系列をスライドする認知の柱が出す数字となる。
    ① 5、視覚、直示、新情報、解決 → 釈迦が一人で山に入る。
    ② 5、視覚、直示、新情報、解決 → 宗教に見る共通性。
    ③ 6、視覚、直示、新情報、未解決 → 発見による転機。
    ④ 6、視覚以外、直示、旧情報、未解決 → 追いつめられると何かが開ける。
    ⑤ 5、視覚、直示、新情報、解決 → 求道生活を修正。
    【場面の全体】
     全体で視覚情報は10割であり、脳に届く通常の五感の入力信号の割合よりもかなり高いため、視覚の情報が問題解決に効いている。

    花村嘉英(2019)「三浦綾子の「道ありき」の多変量解析-クラスタ分析と主成分」より

  • 三浦綾子の「道ありき」の多変量解析-クラスタ分析と主成分4

    ◆場面1

    言ってみれば、この世で望める限りの幸福を一心に集めていたわけだ。しかし彼は老人を見て、人間の衰えゆく姿を思い、葬式を見て、人の命の有限なることも思った。そしてある夜ひそかに、王宮も王子の地位も、美しい妻も子も棄てて、一人山の中に入ってしまった。 A1、B1、C2、D1

    つまり釈迦は、今まで自分が幸福だと思っていたものに、むなしさだけを感じ取ってしまったのであろう。伝導の書といい、釈迦といい、そのそもそもの初めには虚無があったということに、わたしは宗教というものに共通する一つの姿を見た。 A1、B1、C2、D1

    わたし自身、敗戦以来すっかり虚無的になっていたから、この発見はわたしに一つの転機をもたらした。
    A1、B1、C2、D1

    虚無は、この世のすべてのものを否定するむなしい考え方であり、ついには自分自身をも否定することになるわけだが、そこまで追いつめられた時に、何かが開けるということを、伝導の書にわたしは感じた。
    A1、B2、C2、D1

    この伝導の書の終わりにあった、「何時の若き日に、何時の造り主をおぼえよ」の一言は、それ故にひどくわたしの心を打った。それ以来私たちの求道生活は、次第にまじめになっていった。A1、B2、C2、D1

    花村嘉英(2019)「三浦綾子の「道ありき」の多変量解析-クラスタ分析と主成分」より

  • 三浦綾子の「道ありき」の多変量解析-クラスタ分析と主成分3

    3 多変量の分析

     多変量を解析するには、クラスタと主成分が有効な分析になる。これらの分析がデータベースの統計処理に繋がるからである。
     多変数のデータでも、最初は1変数ごとの観察から始まる。また、クラスタ分析は、多変数のデータを丸ごと扱う最初の作業ともいえる。似た者同士を集めたクラスタを樹形図からイメージする。それぞれのクラスタの特徴を掴み、それを手掛かりに多変量データの全体像を考えていく。樹形図については、単純な二個二個のクラスタリングの方法を想定し、変数の数や組み合わせを考える。
     作成したデータベースから特性が2つあるカラムを抽出し、グループ分けをする。例えば、A五感(1視覚と2それ以外)、Bジェスチャー(1直示と2比喩)、C情報の認知プロセス(1旧情報と2新情報)、D情報の認知プロセス(1問題解決と2未解決)というように文系と理系のカラムをそれぞれ2つずつ抽出する。
     まず、ABCDそれぞれの変数の特徴について考える。次に、似た者同士のデータをひとかたまりにし、ここでは言語の認知ABと情報の認知CDにグループ分けをする。得られた変数の特徴からグループそれぞれの特徴を見つける。
     最後に、各場面のラインの合計を考える。それぞれの要素からどのようなことがいえるのであろうか。「道ありき」のバラツキが縦のカラムの特徴を表しているのに対し、ここでのクラスタは、一場面のカラムとラインの特徴を表している。
     なお、外界情報の獲得に関する五感の割合は、視覚82%、聴覚11%、嗅覚4%、触覚2%、味覚1%とする。(片野2018)

    花村嘉英(2019)「三浦綾子の「道ありき」の多変量解析-クラスタ分析と主成分」より

  • 三浦綾子の「道ありき」の多変量解析-クラスタ分析と主成分2

    2 三浦綾子の「道ありき」は気分障害

     「道ありき」の購読脳 「虚無と愛情」にする。回想録執筆時の記憶の中では、肺病のため虚しい思いがつきまとっている。気分障害の原因については、身体疾患との関連があるといわれている。日本成人病予防協会(2014)によると、うつの症状としては、心身のエネルギーが低下することによって日常生活に支障をきたした状態のことである。憂鬱感と不安感が混じった抑うつ感、考えがまとまらず決断に時間がかかり、注意散漫になる思考障害、物事に対する関心や興味が低下する意欲障害がうつ病の基本的な症状である。
     購読脳の組み合せ、「虚無と愛情」という出力が、共生の読みの入力となって横にスライドし、出力として「虚無とうつ」という執筆脳の組を考える。シナジーのメタファーは、「三浦綾子と虚無」として調節する。
    人生の中では失うものもあれば得るものもある。三浦綾子も20代に入って敗戦の翌年に肺結核の症状が出た。しかし、医師は肺結核とは言わず、問診で肺浸潤とか肋膜と説明した。肺結核と診断すれば、現代でいうがんを宣告するようなものであった。何れにせよ何を目標に生きればよいのかわからず、綾子は、何もかもが虚しく思われる虚無の心境となった。

    花村嘉英(2019)「三浦綾子の「道ありき」の多変量解析-クラスタ分析と主成分」より

  • 三浦綾子の「道ありき」の多変量解析-クラスタ分析と主成分1

    1 先行研究との関係

     これまでに三浦綾子(1922-1999)の「道ありき」執筆時の脳の活動を思考とし、シナジーのメタファーを作成している。(花村2019) この小論では、さらに多変量解析に注目し、クラスタ分析と主成分について考察する。それぞれの場面で三浦綾子の執筆脳がデータベースから異なる視点で分析できれば、自ずと客観性は上がっていく。ここでシナジーのメタファーといえば「三浦綾子と虚無」を指す。

    花村嘉英(2019)「三浦綾子の「道ありき」の多変量解析-クラスタ分析と主成分」より

  • 三浦綾子の「道ありき」の相関関係について6

    4 相関係数を言葉で表す

    数字の意味を言葉で確認しておこう。 

    -0. 7≦r≦-1.0 強い負の相関がある
    -0.4≦r≦-0.7 やや負の相関がある
    0≦r≦-0.4 ほとんど負の相関がない
    0≦r≦0.2 ほとんど正の相関がない
    0.2≦r≦0.4 やや正の相関がある
    0.4≦r≦0.7 かなり正の相関がある
    0.7≦r≦1 強い正の相関がある

    5 まとめ

     三浦綾子の「道ありき」のデータベースのうち、言語の認知のカラム、思考の流れ1ある、2ないと、情報の認知のカラム、人工知能(気分障害)で1ある、2ないは、負の強い相関関係になることがわかった。

    参考文献

    花村嘉英 計算文学入門-Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風舎 2005
    花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品-魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社 2015
    花村嘉英 日语教育计划书-面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
    花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默 ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
    前野昌弘 回帰分析超入門 技術評論社 2012
    三浦綾子 道ありき 新潮文庫 2004

  • 三浦綾子の「道ありき」の相関関係について5

    表2 計算表

    A 2 3 5
    偏差 -0.5 0.5 0
    偏差2 0.25 0.25 0.5
    B 5 0 5
    偏差 2.5 2.5 5
    偏差2 6.25 6.25 12.5
    AB偏差の積 -1.25 -1.25 -2.5

    ◆相関係数は、次の公式で求めることができる。

    相関係数=[(A-Aの平均値)x(B-Bの平均値)]の和/
    √(A-Aの平均値)2の和x(B-Bの平均値)2の和

    上記計算表を代入すると、

    相関係数 = -2.5/√0.5 x 12.5 = -2.5/2.5 = -1

    従って、負の強い相関があるといえる。

    花村嘉英(2019)「三浦綾子の『道ありき』の相関について」より

  • 三浦綾子の「道ありき」の相関関係について4

    A 言語の認知(思考の流れ):1ある、2ない → 2、3
    B 人工知能(気分障害):1ある、2ない → 5、0

    ◆A、Bそれぞれの平均値を出す。
    Aの平均:(2 + 3)÷ 2 = 2.5
    Bの平均:(5 + 0)÷ 2 = 2.5
    ◆A、Bそれぞれの偏差を計算する。偏差=各データ-平均値
    Aの偏差:(2 – 2.5)、(3 – 2.5)= -0.5、0.5
    Bの偏差:(5 – 2.5)、(0 – 2.5)= 2.5、-2.5
    ◆A、Bの偏差をそれぞれ2乗する。
    Aの偏差2乗 = 0.25、0.25
    Bの偏差2乗 = 6.25、6.25
    ◆AとBの偏差同士の積を計算する
    (Aの偏差)x(Bの偏差)= -1.25、-1.25
    ◆AとBを2乗したものを合計する。
    Aの偏差を2乗したものの合計 = 0.25 + 0.25 = 0.5
    Bの偏差を2乗したものの合計 = 6.25 + 6.25 = 12.5
    ◆Aの偏差xBの偏差の合計を計算する。-0.75 + -0.75 = -1.5

    花村嘉英(2019)「三浦綾子の『道ありき』の相関について」より

  • 三浦綾子の「道ありき」の相関関係について3

    3 小説の場面に適用する 

    表1 求道生活からの転機
    A 言ってみれば、この世で望める限りの幸福を一心に集めていたわけだ。しかし彼は老人を見て、人間の衰えゆく姿を思い、葬式を見て、人の命の有限なることも思った。そしてある夜ひそかに、王宮も王子の地位も、美しい妻も子も棄てて、一人山の中に入ってしまった。 意味3 1、人工知能 1

    B つまり釈迦は、今まで自分が幸福だと思っていたものに、むなしさだけを感じ取ってしまったのであろう。伝導の書といい、釈迦といい、そのそもそもの初めには虚無があったということに、わたしは宗教というものに共通する一つの姿を見た。 意味3 1、人工知能 1

    C わたし自身、敗戦以来すっかり虚無的になっていたから、この発見はわたしに一つの転機をもたらした。
    意味3 2、人工知能 1

    D 虚無は、この世のすべてのものを否定するむなしい考え方であり、ついには自分自身をも否定することになるわけだが、そこまで追いつめられた時に、何かが開けるということを、伝導の書にわたしは感じた。
    意味3 2、人工知能 1

    E この伝導の書の終わりにあった、「何時の若き日に、何時の造り主をおぼえよ」の一言は、それ故にひどくわたしの心を打った。それ以来私たちの求道生活は、次第にまじめになっていった。
    意味3 2、人工知能 1

    花村嘉英(2019)「三浦綾子の『道ありき』の相関について」より

  • 三浦綾子の「道ありき」の相関関係について2

    2 相関の作り方

     シナジーのメタファーのために作成しているデータベースは、データの種類で見ると、俗に言う測れないカテゴリーデータからなる。数量データといわれる身長、体重、気温、湿度などとは異なり、値が連続ではなく飛び飛びで離散的となる。前野(2012)によると、カテゴリーデータは、対象の性質を表したり、現象や区別を表したりする。性別、好き、嫌い、うまい、まずい、おもしろいなどあるものの性質や現象が示される。
     相関とは原因から結果が生じ、それが互いに関係しあっていることをいう。また、相関関係があるとは、ある測定値の変化に対して他の測定値も変化する場合に使われる。相関の強さは、ピアソンの相関係数で表す。合わせて共分散という統計用語が重要になる。 

    (1) 共分散の公式
    共分散=[(xの各データ-xの平均値)x(yの各データ-yの平均値)]の和/データ数
       =[(xの偏差)x(yの偏差)]の和/データ数
       = xとyの偏差積の和/データ数

    正の相関があると0より大きく、負の相関があると0より小さくなる。

    (2) 相関係数(ピアソン)
    相関係数=XYの偏差平方和/√(Xの偏差平方和)x(Yの偏差平方和)

    「道ありき」の問題解決の場面を使用して、簡単な例を見てみよう。

    花村嘉英(2019)「三浦綾子の『道ありき』の相関について」より