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  • 阿城の「棋王」で執筆脳を考える7

    表3 情報の認知  
     
    同上    情報の認知1  情報の認知2  情報の認知3 
    A 表2と同じ。  3     2      2
    B 表2と同じ。  2     2      2
    C 表2と同じ。  3     2      2
    D 表2と同じ。  3     2      1
    E 表2と同じ。  3     2      1
     
    A:情報の認知1は③その他の条件、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は②問題未解決から推論へである。    
    B:情報の認知1は②グループ化、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は②問題未解決から推論へである。  
    C:情報の認知1は③その他の条件、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は②問題未解決から推論へである。  
    D:情報の認知1は③その他の条件、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は①計画から問題解決へである。  
    E:情報の認知1は③その他の条件、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は①計画から問題解決へである。        
     
    結果      
     貧乏育ちの将棋馬鹿が下放の時代に将棋を通じて本当の人生や幸せを感じる物語。主役の王一生は、仕事をして金が稼げるようにと高校を卒業してから将棋をやるように母親からいわれ、のっぽに勝つも地区のトーナメントに参加せず、最後になって九面指しでめいっぱい力を発揮するため、購読脳の「平凡と真の人生」から執筆脳の「知恵の結集と達成感」という組を引き出すことができる。  
     なお、横にスライドする際、間間に新しいカラムを立てることで信号を増やすことができる。結果がより詳細になることも期待できる。試してもらいたい。   

    花村嘉英(2023)「阿城の『棋王』で執筆脳を考える」より

  • 阿城の「棋王」で執筆脳を考える6

    【連想分析2】 
     
    情報の認知1(感覚情報)   
     感覚器官からの情報に注目することから、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。このプロセルのカラムの特徴は、①ベースとプロファイル、②グループ化、③その他の条件である。 
      
    情報の認知2(記憶と学習)   
     外部からの情報を既存の知識構造へ組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。未知の情報は、またカテゴリー化される。このプロセスは、経験を通した学習になる。このプロセルのカラムの特徴は、①旧情報、②新情報である。 
     
    情報の認知3(計画、問題解決、推論)   
     受け取った情報は、計画を立てるプロセスでも役に立つ。その際、目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。しかし、獲得した情報が完全でない場合は、推論が必要になる。このプロセルのカラムの特徴は、①計画から問題解決へ、②問題未解決から推論へである。

    花村嘉英(2023)「阿城の『棋王』で執筆脳を考える」より

  • 阿城の「棋王」で執筆脳を考える5

    分析例 
     
    1 チャンピオンとの対決も含め九面指しの後でへとへとになっている。     
    2 この小論では、「棋王」の購読脳を「平凡と真の人生」と考えているため、意味3の思考の流れ、知恵の結集に注目する。    
    3 意味1①視覚②聴覚③味覚④嗅覚⑤触覚 、意味2 ①喜②怒③哀④楽、意味3知恵の結集①あり②なし、意味4振舞い ①直示②隠喩③記事なし、人工知能 ①知恵の結集②達成感。   
      
    テキスト共生の公式       
      
    ステップ1:意味1、2、3、4を合わせて解析の組「平凡と真の人生」を作る。 
    ステップ2:チャンピオンとの対決も含め九面指しが行われ、王一生がへとへとになっている様子。チャンピオンの老人による調整で引き分けとなり、泣けるほどに幸せを感じるため、執筆脳の「知恵の結集と達成感」と組になるため、解析の組と相互に作用する。 
     
    A:①視覚+③哀+①あり+①直示という解析の組を、①知恵の結集と②達成感という組と合わせる。   
    B:①視覚+③哀+②なし+①直示という解析の組を、①知恵の結集と②達成感という組と合わせる。  
    C:①視覚+④楽+②なし+①直示という解析の組を、①知恵の結集と②達成感という組と合わせる。  
    D:①視覚+④楽+①あり+①直示という解析の組を、①知恵の結集と②達成感という組と合わせる。  
    E:①視覚+③哀+①あり+①直示という解析の組を、①知恵の結集と②達成感という組と合わせる。    
     
    結果  表2については、テキスト共生の公式が適用される。 

    花村嘉英(2023)「阿城の『棋王』で執筆脳を考える」より

  • 阿城の「棋王」で執筆脳を考える4

    【連想分析1】  
    表2 受容と共生のイメージ合わせ   

    チャンピオンとの対決後でへとへとの場面

    A ”妈,儿今天…妈”。大家都有些酸,扫了地下,打来了,劝了。王一生哭过,滞气调理过来,有了精神,就一起吃饭。意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能 1
    B 画家竟喝得大醉,也不管大家,一个人倒在木床上睡去。电工领了我们,脚卵也跟着,一齐到礼堂台上去睡。意味1 1、意味2 3、意味3 2、意味4 1、人工知能 2
    C 夜黑黑的,伸手不见五指。王一生已近睡死。我却还似乎耳边人声嚷动,眼前火把通明,山民们铁了脸,肩着柴禾在林中,咿咿呀呀地唱,我笑起来,想:意味1 1、意味2 4、意味3 2、意味4 1、人工知能 2
    D 不做俗人,哪儿会知道这般乐趣?加破人亡,平了头每日荷锄,识到了,即是幸,即是福。意味1 1、意味2 4、意味3 1、意味4 1、人工知能 1
    E 衣食是本,自有人类,就是每日在忙这个。可囿在其中,终于还不太象人,倦意渐渐上来,就拥了幕布,沉沉睡去。 意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能 1

    花村嘉英(2023)「阿城の『棋王』で執筆脳を考える」より

  • 阿城の「棋王」で執筆脳を考える3

    3 データベースの作成・分析

     データベースの作成方法について説明する。エクセルのデータについては、列の前半(文法1から意味5)が構文や意味の解析データ、後半(医学情報から人工知能)が理系に寄せる生成のデータである。一応、L(受容と共生)を反映している。データベースの数字は、登場人物を動かしながら考えている。
     こうしたデータベースを作る場合、共生のカラムの設定が難しい。受容は、それぞれの言語ごとに構文と意味を解析し、何かの組を作ればよい。しかし、共生は、作家の知的財産に基づいた脳の活動が問題になるため、作家ごとにカラムが変わる。 

    【データベースの作成】  
     
    表1 「棋王」のデータベースのカラム  

    項目名  内容   説明 
    文法1  態     能動、受動、使役。  
    文法2  時制、相   現在、過去、未来、進行形、完了形。 
    文法3  様相   可能、推量、義務、必然。 
    意味1   五感   視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。
    意味2   喜怒哀楽   情動との接点。瞬時の思い。 
    意味3   思考の流れ  実現ありなし 
    意味4  振舞い   ジェスチャー、身振り。直示と隠喩を考える。 
    医学情報  病跡学との接点 受容と共生の共有点。構文や意味の解析から得た組「情動と畏敬」と病跡学でリンクを張るためにメディカル情報を入れる。
    情報の認知1 感覚情報の捉え方  感覚器官からの情報に注目するため、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。
    情報の認知2 記憶と学習 外部からの情報を既存の知識構造に組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。その際、未知の情報については、学習につながるためカテゴリー化する。記憶の型として、短期、作業記憶、長期を考える。 
    情報の認知3 計画、問題解決、推論  受け取った情報は、計画を立てるときにも役に立つ。目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。獲得した情報が完全でない場合、推論が必要になる。 
    人工知能 知恵の結集と達成感 エキスパートシステム  知恵の結集とは、合体して理を悟り処理すること、達成感とは、目的を達し成功すること。

    花村嘉英(2023)「阿城の『棋王』で執筆脳を考える」より

  • 阿城の「棋王」で執筆脳を考える2

     阿城(1949-)の「棋王」(1984)は、彼の他の短編と同様に文化革命時代の自身の経験に基づいている。知識青年という都市の学校の卒業生を対象に行われた上山下郷運動によるいわゆる下放体験である。毛沢東による指示は、貧農や下層中農について再教育を受けることであり、1968年12月に出された。小説の舞台は、作者が下放した雲南省の西南端のベトナム、ラオスに近い辺境地帯である。
     阿城は、作中差別されている人に温かい眼差しを注ぐ。これは、作者による一種の抗議である。将棋を愛する青年王一生やその師匠の紙屑拾いの老人は、決して社会的地位が上層ではない。しかし、彼らの持っている知恵も確かに捨てがたい。場合よっては有効利用できるからである。上山下郷運動は、毛沢東の死後の1977年文革終了とともに終わる。
     語り手のぼくは、作者の代弁者で二十代前半の年恰好である。文革の時期(1966-1976)に作者が過ごした年齢である。この特異な時代にこそ皆の知恵を集結させた。将棋馬鹿の王一生の母、王一生の師匠の紙屑拾い の老人、将棋王の老人など、知恵が集まれば幸せになれる。
     王一生の母は、仕事あっての人生だから高校を出てから将棋をやるようにと歯ブラシの柄でこさえた将棋の駒を彼に渡し、紙屑拾いの老人は、将棋道に生きる道があると王一生に説き、将棋王の老人は、九面指しもさること棋道が神機妙算で古今の名棋士も確約たると王一生を褒め、平和たる引き分けをもたらす。特異な時代に平凡であることが本当の人生を引き寄せ幸福感が得られるという下りは、将棋好きが多い中国ならではの結末か。
     王一生は、愛されたり、褒められたり、喜びや達成感から精神的な報酬としてドーパミンの分泌が高まっている。因みに目標を立てたときと目標を達成したときの二回ドーパミンの分泌が高まる。九面指しの将棋とそれを達成した喜びからこの神権伝達物質の分泌が見られる。
     そこで「棋王」の購読脳は「平凡と真の人生」、執筆脳は「知恵の結集と達成感」にし、シナジーのメタファーは「阿城と真の人生」にする。

    花村嘉英(2023)「阿城の『棋王』で執筆脳を考える」より

  • 阿城の「棋王」で執筆脳を考える1

    1 はじめに

     文学分析は、通常、読者による購読脳が問題になる。一方、シナジーのメタファーは、作家の執筆脳を研究するためのマクロに通じる分析方法である。基本のパターンは、まず縦が購読脳で横が執筆脳になるLのイメージを作り、次に、各場面をLに読みながらデータベースを作成し、全体を組の集合体にする。そして最後に、双方の脳の活動をマージするために、脳内の信号のパスを探す、若しくは、脳のエリアの機能を探す。これがミクロとマクロの中間にあるメゾのデータとなり、狭義の意味でメタファーが作られる。この段階では、副専攻を増やすことが重要である。 
     執筆脳は、作者が自身で書いているという事実及び作者がメインで伝えようと思っていることに対する定番の読み及びそれに対する共生の読みと定義する。そのため、この小論では、トーマス・マン(1875-1955)、魯迅(1881-1936)、森鴎外(1862-1922)の執筆脳に関する私の著作を先行研究にする。また、これらの著作の中では、それぞれの作家の執筆脳として文体を取り上げ、とりわけ問題解決の場面を分析の対象にしている。さらに、マクロの分析について地球規模とフォーマットのシフトを意識してナディン・ゴーディマ(1923-2014)を加えると、“The Late Bourgeois World”執筆時の脳の活動が意欲と組になることを先行研究に入れておく。
     筆者の持ち場が言語学のため、購読脳の分析の際に、何かしらの言語分析を試みている。例えば、トーマス・マンには構文分析があり、魯迅にはことばの比較がある。そのため、全集の分析に拘る文学の研究者とは、分析のストーリーに違いがある。言語の研究者であれば、全集の中から一つだけシナジーのメタファーのために作品を選び、その理由を述べればよい。なおLのストーリーについては、人文と理系が交差するため、機械翻訳などで文体の違いを調節するトレーニングが推奨される。
     
    花村嘉英(2023)「阿城の『棋王』で執筆脳を考える」より

  • シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅「狂人日記」10

    計算表

    非線形性 3 0 合計3
    偏差 2 -1 合計1
    偏差2 4 1 合計5
    初期値敏感性 2 1 合計3
    偏差 1 0 合計1
    偏差2 1 0 合計1
    AB偏差の積 2 -11 合計1

    ◆相関係数は、次の公式で求めることができる。
    相関係数=[(A-Aの平均値)x(B-Bの平均値)]の和/
    √(A-Aの平均値)2の和x(B-Bの平均値)2の和
    上記計算表を代入すると、
    相関係数 = 1/√5 x 1 = 1/√5 = 1/2.24 = 0.45
    従って、かなり正の相関があるといえる。

    5 相関係数を言葉で表す

    数字の意味を言葉で確認しておく。

    0≦r≦0.2 : ほとんど相関がない
    0.2≦r≦0.4 : やや相関がある
    0.4≦r≦0.7 : かなり相関がある
    0.7≦r≦1 : 強い相関がある

    参考文献

    花村嘉英 計算文学入門-Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風舎 2005
    花村嘉英 森鴎外の「山椒大夫」のDB化とその分析 中国日语教学研究会江苏分会論文集 2015
    花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品-魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社2015
    花村嘉英 日语教育计划书-面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
    花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默 ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
    花村嘉英 川端康成の「雪国」から見えてくるシナジーのメタファーとは-「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ 中国日语教学研究会上海分会論文集  2019

  • シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅「狂人日記」9

    3.2 小説の場面に適用する

     狂人の狂気が覚醒する場面でカオスの特性といえる非線形性と初期値敏感性が取れるかどうか見てみよう。それぞれ、1ある、2なしとする。

    狂人の狂気が覚醒する場面
    A 满本都写着两个字是“吃人”!书上写着这样多字,佃户说了这许多话,却都笑吟吟的睁着怪眼看我.我也是人,他们想要吃我了. 非線形性1 初期値敏感性1
    B 那时我妹子才五岁,可爱可怜的样子,还在眼前.妹子是被大哥吃了.他却劝母亲不要哭.大哥说爷娘生病,做儿子的须割下一片肉来,煮熟了请他吃,才算好人.但是那天的哭法,实在还教人伤心. 非線形性1 初期値敏感性1
    C 没有吃过人的孩子,或者还有?救救孩子. 非線形性1 初期値敏感性1

    A 非線形性1ある、初期値敏感性1ある
    B 非線形性1ある、初期値敏感性1ある
    C 非線形性1ある、初期値敏感性2なし

    非線形性は、あるなしが3、0、一方、初期値敏感性は、あるなしが2、1になる。
    ◆非線形性と初期値敏感性それぞれの平均値を出す。
    非線形性の平均:(3 + 0)÷ 3 = 1
    初期値敏感性の平均:(2 + 1)÷ 3 = 1
    ◆非線形性と初期値敏感性それぞれの偏差を計算する。偏差=各データ-平均値
    非線形性の偏差:(3 – 1)、(0 – 1)= 2、-1
    初期値敏感性の偏差:(2 – 1)、( 1 – 1)= 1、0
    ◆非線形性と初期値敏感性をそれぞれ2乗する。
    非線形性の偏差2乗 = 4、1 
    初期値敏感性の偏差2乗 = 1、0
    ◆非線形性と初期値敏感性の偏差同士の積を計算する
    (非線形性の偏差)x(初期値敏感性の偏差)= 2、-1
    ◆非線形性と初期値敏感性を2乗したものを合計する。
    非線形性の偏差2乗したものの合計 = 4 + 1 = 5
    初期値敏感性の偏差2乗したものの合計 = 1 + 0 = 1
    ◆非線形性と初期値敏感性の偏差の合計を合計する。2 – 1= 1

    花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅『狂人日記』」より

  • シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅「狂人日記」8

    3 統計処理-相関

    3.1 相関の作り方

     シナジーのメタファーのために作成しているデータベースは、データの種類で見ると、俗に言う測れないカテゴリーデータからなる。数量データといわれる身長、体重、気温、湿度などとは異なり、値が連続ではなく飛び飛びで離散的となる。カテゴリーデータは、対象の性質を表したり、現象や、区別を表したりする。性別、好き、嫌い、うまい、まずい、おもしろいなどあるものの性質や現象が示される。(前野2012)
     相関とは原因から結果が生じ、互いに関係しあっていることをいう。また、相関関係があるとは、ある測定値の変化に対して他の測定値も変化する場合に使われる。相関の強さは、ピアソンの相関係数で表す。合わせて共分散という統計用語が重要となる。

    (1) 共分散の公式
    共分散=[(xの各データ-xの平均値)x(yの各データ-yの平均値)]の和/データ数
       =[(xの偏差)x(yの偏差)]の和/データ数
       = xとyの偏差積の和/データ数

    正の相関があると0より大きく、負の相関があると0より小さくなる。

    (2) 相関係数(ピアソン)
    相関係数=XYの偏差平方和/√(Xの偏差平方和)x(Yの偏差平方和)

    「狂人日記」の問題解決の場面を使用して、簡単な例を見てみよう。

    花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅『狂人日記』」より