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  • シナジーのメタファーのプロセス

    [フローチャート] 
    ① 知的財産が自分と近い作家を選択する。
    ② 場面のイメージの対照表を作成する。場面が浮かぶように話をまとめる。
    ③ 解析イメージから何れかの組を作る。言語解析は構文と意味が対象になる。
    ④ 認知科学のモデルは、Lのプロセス全体に適用される。例、前半は言語の分析、後半は情報の分析。
    ⑤ 場面ごとに問題の解決と未解決を確認する。
    ⑥ 問題解決の場面では、Lに縦横ABを滑ってCに到達後、解析イメージに戻る。問題未解決の場面では、すぐに解析イメージに戻る。
    ⑦ 各分野の専門家が思い描くリスク回避を参考にしながら、作家の意思決定を想定する。
    ⑧ 問題解決の場面を中心にして、テキストの共生について考察する。

    ①、②、③は受容の読みのプロセス、④は認知科学の前半と後半、⑤、⑥は異質のCとのイメージ合わせになり、⑦で作家の脳の活動を探り、⑧でシナジーのメタファーに到達する。DBの作成については、これらが全て収まるようにカラムを工夫すること。

    ①一文一文解析しながら、選択した作家の知的財産を追っていく。例えば、受容の段階で文体などの平易な読みを想定し、共生の段階で知的財産に纏わる異質のCを探る。この作業は②と③でも行われる。
    ② 場面のイメージが浮かぶような対照表を作る。
    ③ テキストの解析を何れかの組にする。例えば、トーマス・マンは「イロニーとファジィ」、魯迅は「馬虎と記憶」という組にする。組が見つからなければ、①から③のプロセスを繰り返す。
    ④ 認知プロセスの前半と後半を確認する。
    ⑤ 場面の情報の流れを考える。問題解決と問題未解決で場面を分ける。
    ⑥ 問題解決の場面は、異質のCに到達後、解析イメージにリターンする。問題未解決の場面は、すぐに解析イメージにリターンする。こう考えると、システムがスムーズになる。
    ⑦ 各分野のエキスパートが思い描くリスク回避と意志決定がテーマである。緊急着陸、救急医療、株式市場、環境問題などから生成イメージにつながるようにリスク回避のポイントを作る。そこから、作家の意思決定を考える。
    ⑧ これにより作家の脳の活動の一例といえるシナジーのメタファーが作られる。「魯迅とカオス」というシナジーのメタファーは、テキスト共生に基づいた組のアンサンブルであり、文学をマクロに考えるための方法である。

    花村嘉英「日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで」より

  • シナジーのメタファーとは2

     文学分析は、通常、読者による購読脳が問題になる。一方、シナジーのメタファーは、作家の執筆脳を研究するためのマクロの分析方法である。基本のパターンは、縦が購読脳で横が執筆脳になるLのイメージを作り、各場面をLに読みながらデータベースを作成して全体を組の集合体にし、双方の脳の活動をマージするために、脳内の信号のパスを探していく。
     執筆脳の定義は、作者が自身で書いているという事実及び作者がメインで伝えようと思っていることに対する定番の読みとする。そのため、この小論では、井上靖に関する購読脳の先行研究よりも、トーマス・マン(1875-1955)、魯迅(1881-1936)、森鴎外(1862-1922)の執筆脳に関する私の著作を先行研究とする。また、執筆時の原稿の調査についても、編者は文字データに関する校正を担当するため、最終原稿の段階を前提にする。
     トーマス・マン、魯迅、鴎外の著作の中では、それぞれの作家の執筆脳として文体を取り上げ、とりわけ問題解決の場面を分析の対象にしている。今回はそれに加えて、マクロの分析を意識し、地球規模とフォーマットのシフトについてもナディン・ゴーディマと井上靖を交えて説明する。
     筆者の持ち場が言語学であるため、購読脳の分析の際に、何かしらの言語分析を試みている。例えば、トーマス・マンには構文分析があり、魯迅には言葉の比較がある。そのため、全集の分析に拘る文学の研究者とは、分析のストーリーに違いがある。

    花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーの作り方について」より

  • シナジーのメタファーとは1

    シナジーのメタファーとは

     小説を読むときは、通常、作品の受容を考えるため、読者の脳の活動が問題になる。一方、作家の執筆時の脳の活動を探るために、この小論では共生の読みについて考察していく。シナジーのメタファーは、受容と共生をまとめる一例である。考え方は、通常のメタファーを踏襲し、Aが根源領域、Cが目標領域、そしてBがその写像という関係になる。ここではAが人文科学、Bが認知科学、Cが脳科学である。
     論文の目的は、小説のデータベース(DB)を作るために必要なシナジーのトレーニングについて考え、受容と共生からなるDBを作成し、シナジーのメタファーを考察することにある。但し、シナジーのメタファーのイメージを整えるために、CからBへのリターンを想定している。文学研究をマクロにシステム化するためである。

    Lのストーリーの作り方-文学と計算のモデル

    ① 縦は言語、文学、○○語教育といった人文の軸、横は共生の軸で、奥に行くと双方を調整する脳科学がある。
    ② 縦は解析イメージであり、横は生成イメージである。表象とは、知覚したイメージを記憶して心で再現する人間の精神活動のことである。例えば、言語、記憶、感情、思考、判断といった精神活動は、脳が生み出している。また、シンボルは知覚するものであり、パターンはその処理に当たる。
    ③ 縦横のテーマには、トーマス・マン、魯迅、鴎外そして英独中日といった東西の言語や文化の比較、リスク回避と意思決定による作家の脳の活動や知的財産などがある。
    ④ このモデルの役割は、A(人文)+B(認知)の解析イメージとB(認知)+C(脳科学)の生成イメージをまとめることにある。情報の流れは、AとBから異質のCに到達後、解析イメージにリターンする。

    花村嘉英「日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで」より

  • シナジーのメタファーのメリット

     作家の執筆脳を探るシナジーメタファーの研究は、①Lのストーリーや②データベースの作成、さらに③論理計算や④データ処理が必要になる。しかし、最初のうちは、ある作品について全てを揃えることが難しいため、4つのうちとりあえず3つ(①、②、③または①、②、④)を条件にして、作家の執筆脳の研究をまとめるとよい。以下に、シナジーのメタファーのメリットをまとめておく。

    【メリット】
    1 データベースの作成は、作品の重読と見なせるため、外国語の習得にも応用できる。理解できる言葉であれば、何語でもよい。
    2 データベースの作成が文献学だけでは見えないものを提供するため、客観性も上がり、研究者個人の発見に繋がる。
    3 形態解析ソフトなど新たにインストールすることなく、マイクロソフトのWordやExcelで手軽に取り組むことができる。
    4 論理計算を習得すると、言語文学に関する認知科学の知識が増える。
    5 データ分析により平易な統計処理ができるようになる。
    6 作家違いでデータベース間のリンクが張れると、ネットワークによる相互依存関係も期待できる。
    7 バランスを取るために二個二個のルールが適用されれば、社会学の視点からマクロの研究に関するアイデアを育てることができる。
    8 人間の世界を理解するには、喩えだけでは物足りず、作家を一種の危機管理者と見なして、相互依存に基づいた人間の条件を理解することができる。
    9 作家の執筆脳は、世界中であまり研究対象になっていないため、研究に取り組めば、難易度の高い研究実績として評価が得られる。
    10 ブログやホームページを公開する際、複数の言語を使用しながら、世界レベルの研究実績として紹介できる。

     例えば、シナジーのメタファーを外国語の習得に応用する際、エクセルファイルのカラムAに原文を順次入力していく。入力が終わったら、各行の原文を読みながら購読脳と執筆脳のカラムに数字を入れていく。これが受容の読みとは異なるLの読みを提供するため、シナジーのメタファーは、重読の一つに数えることができる。また、非言語情報のジェスチャーに、例えば、顔の部位の表情を加えると、脳の電気信号の流れをつかむための判断材料になり、セカンドのカラムも意義あるものとなる。

  • シナジーのメタファーを外国語教育に応用する9

    6 まとめ

     人間の思考や言動を理解するには、喩え(メタファー)だけでは適切とはいえない。さらに作家の人間の条件として危機管理者を想定し、データベースの相互依存関係を理解する必要がある。リスク回避については、災害の避難、救急医療、株式の暴落、緊急着陸、生活全般(例、家庭崩壊)などが考えられる。これらを研究の題材としてシステムをつくることができれば、シナジーのメタファーを介してミクロとマクロの文学分析がバランスよく調節できるようになる。

    【参考文献】

    花村嘉英 計算文学入門-Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?新風舎 2005
    花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品-魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社 2015
    花村嘉英 日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
    花村嘉英 シナジーのメタファーの作り方 中国日語教学研究会上海分会論文集(2017)華東理工大学出版社 241-249
    ジグムント・バウマン、チィム・メイ 社会学の考え方(奥井智之訳) ちくま学芸文庫 2016 
    花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーを外国語教育に応用する」より

  • シナジーのメタファーを外国語教育に応用する8

    5 効果

     ナディン・ゴーディマの”The Late Bourgeois World” のデータベースからシナジーのメタファーを外国語教育に応用することを考える。

    1 紙片の小説を使用して、一文または一場面に関して言語と情報の認知によりLに執筆脳の考察をすることは難しい。しかし、データベースを作成すれば、ラインでそれを処理することができる。
    2 ラインの数字を整える際、原文を何度も読み返すことにより、小説の重読となる。
    3 電子版の小説をエクセルに作成することが外国語を書くイメージにつながり、単語や熟語の検索そして英日対照表も作りやすくなる。
    4 外国語と母国語の対照表の作成は、翻訳のトレーニングにもつながる。
    5 作業単位が増えると、自ずと比較の言語文学へと展開し、副専攻の調節もできるようになる。
    6 比較の言語文学のデータを作るとき、電子データがあれば、個々のデータをかけ合わせることにより、人の目には見えないものが見えてくる可能性がある。
    7 データベースの相互依存関係から、人間の思考や言動を理解するには、喩えでは不適切なところもあり、人間の条件として、例えば、危機管理者としての作家を考察する。トーマス・マンであれば、20世紀の前半にドイツの発展が止まることを危惧して小説や論文を書き、魯迅であれば、作家として馬虎(詐欺をも含む人間的ないい加減さ)という精神的な病から中国人民を救済するために小説を書いている。
     森鴎外であれば、明治天皇や乃木大将が亡くなってから後世に普遍性を残すために歴史小説を書いた。また、ナディン・ゴーディマであれば、崩壊状態にあった反アパルトヘイト運動に白人がどのように関与できるのかを自問し、世の中の流れと逆流している自国の現状に危機感を抱き、何かの形で革命に関わりたいという意欲を持っていた。
    8 Lのデータベースは、セカンドのカラムを設けることができ、ミクロレベルの分析にも対応できる。川端康成の場合、主人公は実体となりそもそも存在し、主人公を理想の型に入れて加工しながら育てる世界に個物がある。こうした創造の一例を「雪国」に見る顔の表情という非言語情報からなるシステムと考え、川端が求める実体と個物の説明をデータベースのセカンドのカラムにより実験する。
    9 ミクロの分析は、例えば、言語の認知で見ると、単語や熟語、情報の認知で見ると、感覚情報や記憶で応用例がある。

    花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーを外国語教育に応用する」より

  • シナジーのメタファーを外国語教育に応用する7

    【日頃からの準備】
    ① カラム構成から見て、記憶については勉強するとよい。短期記憶、作業記憶、長期記憶など、基本的な内容を抑えておく。
    ② Lのイメージで信号の流れが止まらないように、所属の系列や界隈を除いた非専門の系列のブラックボックスを消すために、翻訳の作業単位を作る。作業単位は、外国語と系列の専門知識を組にする。ビジネス翻訳、産業翻訳、機械翻訳、特許翻訳そして文芸翻訳などできるだけ偏ることなく実績を作ることが大切である。
    ③ 翻訳の作業単位を作りながら、人文と社会、文系と理系といった共生をイメージする。例えば、人文と情報、心理とメディカル、文化と栄養、法律と技術、社会と福祉、社会とシステム、ソフトウェアとハードウェアといった自分で処理できる文理の組み合わせが増えていけば、文献学の拡大版としてテキスト共生という評価項目を立てることができる。
    ④ 定番の読みの中には、作者が伝えようとする情報(執筆時の脳の活動)が必ず含まれている。

    【現状の評価】(2018年6月現在)
    ① これまで考案しているシナジーのメタファーは、「トーマス・マンとファジィ」、「魯迅とカオス」、「森鴎外と感情」、「ナディン・ゴーディマと意欲」である。
    ② 「ナディン・ゴーディマと意欲」については、”The Late Bourgeois World”(ブルジョワ世界の終わりに)」を題材にし、前頭葉の活動に焦点を置いている。男女の前頭葉の働きを区別するために、井上靖の「わが母の記」と比較した分析もある。
    ③ 「井上靖と連合野のバランス」は、「我が母の記」を題材にして、前頭葉、側頭葉、後頭葉、前頭葉の個々の働きだけでなく、連合した機能に焦点を当てている。さらに、教養小説、歴史小説、社会小説といったジャンル違いの微妙な読みに関する執筆脳の考察を考えている。
    ④ 「川端康成と認知発達」は、「雪国」執筆時の康成の脳の活動を考察している。購読脳の出力「無と創造」と執筆脳のゴール「人工感情と認知発達」を調節するために、存在の論理から「無と創造」と関連するバルカン文を置き、文理のバランスが取れるようにした。さらにセカンドのカラムとして「五感と顔の表情」を設け、脳の活動を調節する方法について考察した。

    花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーを外国語教育に応用する」より

  • シナジーのメタファーを外国語教育に応用する6

    4 シナジーのメタファーのトレーニング(Version 1)

    【分析法】
     シナジーのメタファーは、作家の執筆脳を研究すための分析方法である。まず、読者の購読脳が言語の認知を通して考察され、その出力が入力となって情報の認知を通ると作家の執筆脳が見えてくる。そもそも人文科学にはないLのフォーマットを考えるための前提として、非専門の系列のブラックボックスを消す必要がある。
     このLの分析のために必要となるものは、次の4つである。但し、3と4はどちらか一つでも客観性を上げることができる。
    ① Lのストーリーを作成する。
    ② リレーショナル・データベースを作成する、その際、セカンド的に何か他のカラムを考えてみる。例えば、言語と非言語のセカンドとして、顔の表情を考える。
    ③ データベースの統計処理を試みる。例えば、バラツキや推定など。
    ④ Lのストーリーを論理計算(カリキュレーション)で考える。

    【トレーニングの手順】
    ① 「森鴎外のデータベース化とその分析」を一読する。
    ② データベースのカラムの意味を確認してから、「山椒大夫」、「佐橋甚五郎」、「安井夫人」、「魚玄機」のエクセルのフォーマットに自分で数字を入力し、データを作成する。
    ③ 作成したデータベースのバラツキを調べて、既存の研究と照合する。一つは、文学研究と、また一つは、理系の研究と照合してみる。つまり、データベースは、文理双方と調節するための中間的な研究ツールである。
    ④ 照合ができれば、データベースは、一定のレベルで作成できている。

    花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーを外国語教育に応用する」

  • シナジーのメタファーを外国語教育に応用する5

     但し、Lのフォーマットを作る際に、非専門のブラックボックスを消す必要がある。これが難しい。そもそもやってもやらなくてもいいのであれば、積極的に取り組む人は少ないであろうし、やってみようと思ったところで、どうすればよいのか思案に暮れる。
     そこで、主の専門の人文系及び界隈の文化を縦にし、非専門の系列を学部修了位のレベルで横に滑るLのフォーマットを作ろうと思った。私の場合、文献学が基本のため、翻訳でLのフォーマットの土台を調節した。翻訳の作業単位は、外国語の知識と系列の専門知識が組になってできている。ドイツ語と文学、中国語と法律、英語と情報、ドイツ語とバイオ、英語とメディカルといった作業単位を中心にし、翻訳の実績を日々重ねている。
     また、実務のみならず、実績を整えるために、資格が取れるとよい。サラリーマンも資格を重ねてレポートを作成しなければ、昇進できない時代である。外国語はともかくとして、非専門の系列も客観的に評価されるためである。例えば、検定2級が取れれば、検定準1級位の勉強はしているといえるし、検定3級でも検定準2級の勉強はしているといえるであろう。このように実務や資格、問題解決のためのレポート作成は、誰にとっても人物評価をする際の材料となり、発言権を得るためになくてはならない実績であろう。私の社会人としての主な資格は、以下の通りである。

    1 日本成人病予防協会(JAPA)健康管理士一般指導員 2015年3月認定
    2 健康管理能力検定1級取得 2015年3月
    3 予防医学・代替医療振興協会(P&A)予防医学指導士 2015年12月認定
    4 エイブス・メディカル翻訳英和上級修了2016年3月(同コース初級修了2015年9月)
    5 予防医学・代替医療振興協会 代替医療カウンセラー 2016年4月認定
    6 認知症予防改善医療団(DMC)認知症ケアカウンセラー 2016年12月認定
    7 日本成人病予防協会 健康管理士一般指導員ゴールド 2017年4月認定
    8 バベル・ユニバーシティ中日契約書翻訳コース修了2017年10月

    花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーを外国語教育に応用する」より

  • シナジーのメタファーを外国語教育に応用する4

    3 副専攻で資格を取る

     学歴を土台にして職歴を作る、こうしたキャリアの形成は、社会人にとって当たりまえのことである。サラリーマンの育成にも実務を踏まえて、資格を取るというルールがある。私の場合、主の専門は、人文、特に、ドイツ語学文学、言語学で、社会、情報、バイオ、メディカルは、副専攻である。
     二十代から三十代にかけて、立教大学大学院文学研究科ドイツ文学専攻博士前期及び後期課程で主の専門の基礎を作り、続けてドイツ・チュービンゲン大学大学院新文献学部博士課程でドイツ語学、言語学(意味論)を専攻しながら、トーマス・マンのイロニーとファジィ理論の整合性について研究を進めた。その後、技術翻訳の仕事をしながらシナジー学会で研究発表をし、「計算文学入門-Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」という著作を四十代前半に出版した。
     計算文学という用語は、誤解されやすい。情報科学の専門家が数理や技術の知識を用いて小説を分析すると理解されがちだからである。人文科学で行う計算文学は、Tの逆さの認知科学の定規を縦横に言語の認知と情報の認知からなるLのフォーマットに置き換えて、小説のリレーショナル・データベースを作成する。データベースの分析は、統計処理と論理計算のどちらか一つを条件にする。そして、作家の執筆脳の組(例えば、トーマス・マンとファジィ、魯迅とカオス、森鴎外と感情、ナディン・ゴーディマと意欲)を作ることができれば、シナジーのメタファーに到達するため、人文科学からの計算文学も成立する。(花村2005、2015、2017) 

    花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーを外国語教育に応用する」より