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  • 三浦綾子の「道ありき」で執筆脳を考える6

    分析例

    1 聖書を読んで釈迦を思い虚無の生活から転機が訪れる場面。
    2 この小論では、「道ありき」執筆時の三浦綾子の脳の活動を「虚無とうつ」と考えているため、意味3の思考の流れ、虚無のありなしに注目する。
    3 意味1の喜怒哀楽のうち喜楽は、聖書を渡した前川正との愛情につながる。
    4 意味1:①喜②怒③哀④楽、意味2:①視覚②聴覚③味覚④嗅覚⑤触覚、意味3:①虚無あり②なし、意味4振舞い:①直示②隠喩③記事なし
    5 疾病脳 虚無でうつ:①ある②なし、健常脳 うつからの回復:①ある②なし

    テキスト共生の公式

    ステップ1:意味1、2、3、4を合わせて解析の組「虚無と愛情」を作る。
    ステップ2:うつ病の精神症状から「虚無とうつ」という組を作り、解析の組と合わせる。

    A:③哀+①視覚+①虚無あり+①直示という解析の組を、うつ病の精神症状からなる虚無でうつあり+うつから回復なしという組と合わせる。
    B:③哀+①視覚+①虚無あり+①直示という解析の組を、うつ病の精神症状からなる虚無でうつあり+うつから回復なしという組と合わせる。
    C:①喜+①視覚+②虚無なし+②隠喩という解析の組を、うつ病の精神症状からなる虚無でうつなし+うつから回復ありという組と合わせる。 
    D:①喜+①視覚+②虚無なし+②隠喩という解析の組を、うつ病の精神症状からなる虚無でうつなし+うつから回復ありという組と合わせる。
    E:④楽+①視覚+②虚無なし+②隠喩という解析の組を、うつ病の精神症状からなる虚無でうつなし+うつから回復ありという組と合わせる。

    結果 
    表2については、テキスト共生の公式が適用される。

    花村嘉英(2019)「三浦綾子の『道ありき』の執筆脳について」より

  • 三浦綾子の「道ありき」で執筆脳を考える5

    【連想分析1】
    表2 受容と共生のイメージ合わせ

    虚無の生活から転機が訪れる場面
    A 言ってみれば、この世で望める限りの幸福を一心に集めていたわけだ。しかし彼は老人を見て、人間の衰えゆく姿を思い、葬式を見て、人の命の有限なることも思った。そしてある夜ひそかに、王宮も王子の地位も、美しい妻も子も棄てて、一人山の中に入ってしまった。
    意味1 3、意味2 1、意味3 1、意味4 1、疾病脳 1、健常脳 2

    B つまり釈迦は、今まで自分が幸福だと思っていたものに、むなしさだけを感じ取ってしまったのであろう。電動の書といい、釈迦といい、そのそもそもの初めには虚無があったということに、わたしは宗教というものに共通する一つの姿を見た。
    意味1 1、意味2 1、意味3 2、意味4 2、疾病脳 1、健常脳 2

    C わたし自身、敗戦以来すっかり虚無的になっていたから、この発見はわたしに一つの転機をもたらした。
    意味1 1、意味2 1、意味3 2、意味4 2、疾病脳 2、健常脳 1

    D 虚無は、この世のすべてのものを否定するむなしい考え方であり、ついには自分自身をも否定することになるわけだが、そこまで追いつかれた時に、何かが開けるということを、電動の書にわたしは感じた。
    意味1 1、意味2 1、意味3 2、意味4 2、疾病脳 2、健常脳 1

    E この伝導の書の終わりにあった、「汝の若き日に、汝の造り主をおぼえよ」の一言は、それ故にひどくわたしの心を打った。それ以来私たちの求道生活は、次第にまじめになっていった。
    意味1 4、意味2 1、意味3 2、意味4 2、疾病脳 2、健常脳 1

    花村嘉英(2019)「三浦綾子の『道ありき』の執筆脳について」より

  • 三浦綾子の「道ありき」で執筆脳を考える4

    3 データベースの作成・分析

     データベースの作成法について説明する。エクセルのデータについては、列の前半(文法1から意味5)が構文や意味の解析データ、後半(医学情報から人工知能)が理系に寄せる生成のデータである。一応、L(受容と共生)は反映している。データベースの数字は、登場人物を動かしながら考えている。
     こうしたデータベースを作る場合、共生のカラムの設定が難しい。受容は、それぞれの言語ごとに構文と意味を解析し、何かの組を作ればよい。しかし、共生は、作家の知的財産に基づいた脳の活動が問題になるため、作家ごとにカラムが変わる。

    【データベースの作成】
    表1 「道ありき」のデータベースのカラム
    項目名  内容         説明
    文法1 名詞の格  三浦綾子の助詞の使い方を考える。
    文法2 態  能動、受動、使役。
    文法3 時制  アスペクト 現在、過去、未来、進行形、完了形。
    文法4 モダリティ  様相の表現。可能、推量、義務、必然。
    意味1  喜怒哀楽  感情との接点。
    意味2  五感  視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。
    意味3  思考の流れ  虚無ある、なし。
    意味4 振舞い  ジェスチャー、身振り。直示と隠喩を考える。
    医学情報 病跡学との接点 受容と共生の共有点。構文や意味の解析から得た組「虚無と愛情」と病跡学でリンクを張るためにメディカル情報を入れる。
    記憶   短期、作業記憶、長期(陳述と非陳述) 作品から読み取れる記憶を拾う。長期記憶は陳述と非陳述に分類される。
    情報の認知1 感覚情報の捉え方  感覚器官からの情報に注目するため、対象の捉え方が問題になる。例えば、ベースとプロファイルやグループ化または条件反射。
    情報の認知2 記憶と学習  外部からの情報を既存の知識構造に組み込む。その際、未知の情報についてはカテゴリー化する。学習につながるため。記憶の型として、短期、作業記憶、長期(陳述と非陳述)を考える。
    情報の認知3 計画、問題解決、推論  受け取った情報は、計画を立てるときにも役に立つ。目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。獲得した情報が完全でない場合、推論が必要になる。
    疾病脳 虚無でうつ 何もなく虚しい心境。空虚であり自己も否定する。抑うつ感、不安感、思考や意欲に障害が出る。気分障害。
    健常脳 うつから回復 気分障害からの回復。

    花村嘉英(2019)「三浦綾子の『道ありき』の執筆脳について」より

  • 三浦綾子の「道ありき」で執筆脳を考える3

     綾子の交際相手の前川正も手術が決まる。第一回目に肋骨を四本取ることになる。前川は、麻酔が苦手らしい。手術の間無事に終わることを綾子は祈っていた。その年、昭和二十七年、綾子は洗礼を受けた。正月が来た。前川正は、二週間後に肋骨を四本取るため、二回目の手術を受ける。二回目の手術が終わってから、不吉な夢を見た。正が亡くなったといって彼の母が病室にゴザを返しに来た。あまりにありありとしていて何とも言えない不吉な予感がした。自身の自殺願望すら思い出す。自殺願望も気分障害の症状である。
     ギブスをはめたまま旭川へ帰郷する。31歳になっていた。発病してから8年が過ぎた。前川正の術後の症状を聞くと、血痰が出るという。つまり空洞は潰れていない。翌年の綾子の誕生日4月25日に母上の代筆で和紙に鉛筆書きで書かれた手紙が届いた。5月2日に前川正は亡くなった。前の晩、食事中に意識不明になって、そのまま意識が戻らず亡くなったという。綾子は、病室で号泣する。
     前川正の喪が明けてから、綾子の病室を訪問する客の中に三浦光世という男がいた。旭川営林署に勤務する会計係である。死刑因と文通し、慰め力づけている人であった。やはり腎臓結核の手術歴がある。確かに結核は、侵入経路の大多数が肺出る。しかし、肺や腸、腎臓などの臓器や骨、関節そして皮膚を侵し、胸膜炎や腹膜炎を起こす。三浦は、清潔で静かな表情をし、前川正と趣味や思想が似ていた。綾子は、熱が出て寝汗もかき、血痰が増え面会謝絶になる。病気を気づかう見舞いから、次第に三浦光世に惹かれていく。
     微熱や寝汗はあるも少しずつ体力がついたころ、万一のために遺言を書き、歌を整理していた。自分の死体を解剖してもらいたい。解剖用死体が不足していて、死後に何かの役に立ちたいという思いからである。三浦光世に渡すと、必ず治るといってノートを読んでくれた。三浦の手紙には、最愛なるという形容が綾子の名前についていた。愛の励ましのおかげで、綾子の体は元気になり、外出もできるようになった。
    昭和三十四年の正月、三浦の年頭の挨拶のとき、婚約式が1月25日に決まった。式が終わると、結婚式は5月24日になった。よく晴れた日曜日に教会堂で牧師の言葉に二人で深く頷いた。
     回想録執筆時の記憶の中では、肺病のため虚しい思いがつきまとっている。そこで「道ありき」の執筆脳は、「虚無とうつ」にする。ツングの自己評価うつ病尺度(日本成人病予防協会2014)を「道ありき」に適用すると、スコアは53点となり、当時の三浦綾子は、中程度の抑うつ傾向にあったといえる。シナジーのメタファーは、「三浦綾子と虚無」である。

    花村嘉英(2019)「三浦綾子の『道ありき』の執筆脳について」より

  • 三浦綾子の「道ありき」で執筆脳を考える2

    2 「道ありき」のLのストーリー

     人生の中では失うものもあれば得るものもある。例えば、病気になれば気持ちが滅入り、物事を悪く考えるようになる。三浦綾子も20代に入って敗戦の翌年に肺結核の症状が出た。しかし、医師は肺結核とは言わず、問診で肺浸潤とか肋膜と説明した。肺結核と診断すれば、現代でいうがんを宣告するようなものであった。何れにせよ何を目標に生きればよいのかわからず、綾子は、何もかもが虚しく思われる虚無の心境となった。
    虚無的生活は、人間を駄目にする。三浦綾子曰く、全てが虚しいから、生きることに情熱はなく、何もかもが馬鹿くさくなり、全ての存在が否定的になって、自分の存在すら肯定できない。但し、一つだけ否定できないものがあった。それは、教え子に対する愛情である。
     そんな時、医学生の前川正という人から聖書を進められる。聖書は、教訓めいたことのみならず、虚無的な物の見方も含み、自己を否定して追い込むと何かが開けると説く。綾子の求道生活は、次第に真面目になっていく。そこで「道ありき」の購読脳を「虚無と愛情」にする。
     旭川での入院当初、三浦綾子自身は、カリエスだと思っていた。カリエスとは、骨の慢性炎症、ことに結核によって骨質が次第に溶け、膿が出るようになる骨の病である。一方、肺結核は、結核菌によって起る慢性の肺の感染症、多くは、無自覚に起こり、咳、喀痰、喀血、呼吸促迫、胸痛などの局所症状、羸痩(るいそう)、倦怠、微熱、発汗または食欲不振、脈拍増加などの一般症状を呈する。カリエスは、症状が相当進まないと、医師はそのように診断しない。
     札幌に転院してから熱が続き体は痩せ血痰も出て排尿の回数が多くなり、夜だけで7、8回起きることがあった。病院では検査が続く。血液検査、尿検査、1.8リットルの水を飲む水検査など。それでも体はますます痩せていく。胸部に空洞が判明した。背中も痛み、下半身に麻痺が来て失禁も伴い、まさにカリエスである。絶対安静の診断が下される。こうした身体疾患が原因となり、気分障害が発症している。

    花村嘉英(2019)「三浦綾子の『道ありき』の執筆脳について」より

  • 三浦綾子の「道ありき」で執筆脳を考える1

    1 先行研究

     文学分析は、通常、読者による購読脳が問題になる。一方、シナジーのメタファーは、作家の執筆脳を研究するためのマクロに通じる分析方法である。基本のパターンは、まず縦が購読脳で横が執筆脳になるLのイメージを作り、次に、各場面をLに読みながらデータベースを作成し、全体を組の集合体にする。そして最後に、双方の脳の活動をマージするために、脳内の信号のパスを探す、若しくは、脳のエリアの機能を探す。これがミクロとマクロの中間にあるメゾのデータとなり、狭義の意味でシナジーのメタファーが作られる。この段階では、副専攻を増やすことが重要である。 
     執筆脳は、作者が自身で書いているという事実及び作者がメインで伝えようと思っていることに対する定番の読み及びそれに対する共生の読みと定義する。そのため、この小論では、トーマス・マン(1875-1955)、魯迅(1881-1936)、森鴎外(1862-1922)の執筆脳に関する私の著作を先行研究にする。また、これらの著作の中では、それぞれの作家の執筆脳として文体を取り上げ、とりわけ問題解決の場面を分析の対象にしている。さらに、マクロの分析について地球規模とフォーマットのシフトを意識してナディン・ゴーディマ(1923-2014)を加えると、“The Late Bourgeois World”執筆時の脳の活動が意欲と組になることを先行研究に入れておく。
     筆者の持ち場が言語学のため、購読脳の分析の際に、何かしらの言語分析を試みている。例えば、トーマス・マンには構文分析があり、魯迅にはことばの比較がある。そのため、全集の分析に拘る文学の研究者とは、分析のストーリーに違いがある。文学の研究者であれば、全集の中から一つだけシナジーのメタファーのために作品を選び、その理由を述べればよい。なお、Lのストーリーについては、人文と理系が交差するため、機械翻訳などで文体の違いを調節するトレーニングが推奨される。
     メゾのデータを束ねて何やら予測が立てば、言語分析や翻訳そして資格に基づくミクロと医学も含めたリスクや観察の社会論からなるマクロとを合わせて、広義の意味でシナジーのメタファーが作られる。

    花村嘉英(2019)「三浦綾子の『道ありき』の執筆脳について」より

  • シナジーのメタファーを外国語教育に応用する9

    6 まとめ

     人間の思考や言動を理解するには、喩え(メタファー)だけでは適切とはいえない。さらに作家の人間の条件として危機管理者を想定し、データベースの相互依存関係を理解する必要がある。リスク回避については、災害の避難、救急医療、株式の暴落、緊急着陸、生活全般(例、家庭崩壊)などが考えられる。これらを研究の題材としてシステムをつくることができれば、シナジーのメタファーを介してミクロとマクロの文学分析がバランスよく調節できるようになる。

    【参考文献】

    花村嘉英 計算文学入門-Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?新風舎 2005
    花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品-魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社 2015
    花村嘉英 日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
    花村嘉英 シナジーのメタファーの作り方 中国日語教学研究会上海分会論文集(2017)華東理工大学出版社 241-249
    ジグムント・バウマン、チィム・メイ 社会学の考え方(奥井智之訳) ちくま学芸文庫 2016 
    花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーを外国語教育に応用する」より

  • シナジーのメタファーを外国語教育に応用する8

    5 効果

     ナディン・ゴーディマの”The Late Bourgeois World” のデータベースからシナジーのメタファーを外国語教育に応用することを考える。

    1 紙片の小説を使用して、一文または一場面に関して言語と情報の認知によりLに執筆脳の考察をすることは難しい。しかし、データベースを作成すれば、ラインでそれを処理することができる。
    2 ラインの数字を整える際、原文を何度も読み返すことにより、小説の重読となる。
    3 電子版の小説をエクセルに作成することが外国語を書くイメージにつながり、単語や熟語の検索そして英日対照表も作りやすくなる。
    4 外国語と母国語の対照表の作成は、翻訳のトレーニングにもつながる。
    5 作業単位が増えると、自ずと比較の言語文学へと展開し、副専攻の調節もできるようになる。
    6 比較の言語文学のデータを作るとき、電子データがあれば、個々のデータをかけ合わせることにより、人の目には見えないものが見えてくる可能性がある。
    7 データベースの相互依存関係から、人間の思考や言動を理解するには、喩えでは不適切なところもあり、人間の条件として、例えば、危機管理者としての作家を考察する。トーマス・マンであれば、20世紀の前半にドイツの発展が止まることを危惧して小説や論文を書き、魯迅であれば、作家として馬虎(詐欺をも含む人間的ないい加減さ)という精神的な病から中国人民を救済するために小説を書いている。
     森鴎外であれば、明治天皇や乃木大将が亡くなってから後世に普遍性を残すために歴史小説を書いた。また、ナディン・ゴーディマであれば、崩壊状態にあった反アパルトヘイト運動に白人がどのように関与できるのかを自問し、世の中の流れと逆流している自国の現状に危機感を抱き、何かの形で革命に関わりたいという意欲を持っていた。
    8 Lのデータベースは、セカンドのカラムを設けることができ、ミクロレベルの分析にも対応できる。川端康成の場合、主人公は実体となりそもそも存在し、主人公を理想の型に入れて加工しながら育てる世界に個物がある。こうした創造の一例を「雪国」に見る顔の表情という非言語情報からなるシステムと考え、川端が求める実体と個物の説明をデータベースのセカンドのカラムにより実験する。
    9 ミクロの分析は、例えば、言語の認知で見ると、単語や熟語、情報の認知で見ると、感覚情報や記憶で応用例がある。

    花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーを外国語教育に応用する」より

  • シナジーのメタファーを外国語教育に応用する7

    【日頃からの準備】
    ① カラム構成から見て、記憶については勉強するとよい。短期記憶、作業記憶、長期記憶など、基本的な内容を抑えておく。
    ② Lのイメージで信号の流れが止まらないように、所属の系列や界隈を除いた非専門の系列のブラックボックスを消すために、翻訳の作業単位を作る。作業単位は、外国語と系列の専門知識を組にする。ビジネス翻訳、産業翻訳、機械翻訳、特許翻訳そして文芸翻訳などできるだけ偏ることなく実績を作ることが大切である。
    ③ 翻訳の作業単位を作りながら、人文と社会、文系と理系といった共生をイメージする。例えば、人文と情報、心理とメディカル、文化と栄養、法律と技術、社会と福祉、社会とシステム、ソフトウェアとハードウェアといった自分で処理できる文理の組み合わせが増えていけば、文献学の拡大版としてテキスト共生という評価項目を立てることができる。
    ④ 定番の読みの中には、作者が伝えようとする情報(執筆時の脳の活動)が必ず含まれている。

    【現状の評価】(2018年6月現在)
    ① これまで考案しているシナジーのメタファーは、「トーマス・マンとファジィ」、「魯迅とカオス」、「森鴎外と感情」、「ナディン・ゴーディマと意欲」である。
    ② 「ナディン・ゴーディマと意欲」については、”The Late Bourgeois World”(ブルジョワ世界の終わりに)」を題材にし、前頭葉の活動に焦点を置いている。男女の前頭葉の働きを区別するために、井上靖の「わが母の記」と比較した分析もある。
    ③ 「井上靖と連合野のバランス」は、「我が母の記」を題材にして、前頭葉、側頭葉、後頭葉、前頭葉の個々の働きだけでなく、連合した機能に焦点を当てている。さらに、教養小説、歴史小説、社会小説といったジャンル違いの微妙な読みに関する執筆脳の考察を考えている。
    ④ 「川端康成と認知発達」は、「雪国」執筆時の康成の脳の活動を考察している。購読脳の出力「無と創造」と執筆脳のゴール「人工感情と認知発達」を調節するために、存在の論理から「無と創造」と関連するバルカン文を置き、文理のバランスが取れるようにした。さらにセカンドのカラムとして「五感と顔の表情」を設け、脳の活動を調節する方法について考察した。

    花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーを外国語教育に応用する」より

  • シナジーのメタファーを外国語教育に応用する6

    4 シナジーのメタファーのトレーニング(Version 1)

    【分析法】
     シナジーのメタファーは、作家の執筆脳を研究すための分析方法である。まず、読者の購読脳が言語の認知を通して考察され、その出力が入力となって情報の認知を通ると作家の執筆脳が見えてくる。そもそも人文科学にはないLのフォーマットを考えるための前提として、非専門の系列のブラックボックスを消す必要がある。
     このLの分析のために必要となるものは、次の4つである。但し、3と4はどちらか一つでも客観性を上げることができる。
    ① Lのストーリーを作成する。
    ② リレーショナル・データベースを作成する、その際、セカンド的に何か他のカラムを考えてみる。例えば、言語と非言語のセカンドとして、顔の表情を考える。
    ③ データベースの統計処理を試みる。例えば、バラツキや推定など。
    ④ Lのストーリーを論理計算(カリキュレーション)で考える。

    【トレーニングの手順】
    ① 「森鴎外のデータベース化とその分析」を一読する。
    ② データベースのカラムの意味を確認してから、「山椒大夫」、「佐橋甚五郎」、「安井夫人」、「魚玄機」のエクセルのフォーマットに自分で数字を入力し、データを作成する。
    ③ 作成したデータベースのバラツキを調べて、既存の研究と照合する。一つは、文学研究と、また一つは、理系の研究と照合してみる。つまり、データベースは、文理双方と調節するための中間的な研究ツールである。
    ④ 照合ができれば、データベースは、一定のレベルで作成できている。

    花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーを外国語教育に応用する」