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  • 谌容の「人到中年」で執筆脳を考える7

    【連想分析2】

    情報の認知1(感覚情報)  
     感覚器官からの情報に注目することから、対象の捉え方が問題になる。このプロセルのカラムの特徴は、①ベースとプロファイル、②グループ化、③その他の条件である。
     
    情報の認知2(記憶と学習)  
     このプロセスは、経験を通した学習になる。このプロセルのカラムの特徴は、①旧情報、②新情報である。

    情報の認知3(計画、問題解決、推論)  
     このプロセルのカラムの特徴は、①計画から問題解決へ、②問題未解決から推論へである。

    花村嘉英(2022)「谌容の『人到中年』で執筆脳を考える」より

  • 谌容の「人到中年」で執筆脳を考える6

    分析例

    1 10年前と同様に詩で妻の回復を祈る。  
    2 この小論では、「人到中年」の購読脳を「現実と矛盾」と考えているため、意味3の思考の流れ、実現に注目する。    
    3 意味1①視覚②聴覚③味覚④嗅覚⑤触覚 、意味2 ①喜②怒③哀④楽、意味3放浪①あり②なし、意味4振舞い ①直示②隠喩③記事なし、人工知能 ①実現②相互排斥。   
     
    テキスト共生の公式      
     
    ステップ1:意味1、2、3、4を合わせて解析の組「現実と矛盾」を作る。
    ステップ2:10年間でこんなに苦しむ妻を見たことがない。しかし、苦悩の中にも回復を詩で念じる夫の姿は「紆余曲折と光明」という組になり、解析の組と相互に作用する。

    A:①視覚+③哀+①あり+①直示という解析の組を、①紆余曲折と②光明という組と合わせる。   
    B:①視覚+③哀+①あり+①直示という解析の組を、①紆余曲折と②光明という組と合わせる。  
    C:①視覚+③哀+①あり+②隠喩という解析の組を、①紆余曲折と②光明という組と合わせる。 
    D:①視覚+④楽+①あり+①直示という解析の組を、①紆余曲折と②光明という組と合わせる。  
    E:①視覚+①喜+①あり+①隠喩という解析の組を、①紆余曲折と②光明という組と合わせる。    

    結果  表2については、テキスト共生の公式が適用される。

    花村嘉英(2022)「谌容の『人到中年』で執筆脳を考える」より

  • 谌容の「人到中年」で執筆脳を考える5

    【連想分析1】  

    表2 受容と共生のイメージ合わせ
    妻が回復するように祈る場面

    A 这绝望的喊声象一把尖刀刺进傅家杰的胸膛。他睁着眼,紧盯着从他面前缓缓推过的这张床,紧盯着那无情的白被单下隆起的遗体。突然,他象触了电似的,猛然朝陆文婷的病房跑去。
    意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能 1

    B 他一口气泡到她的床前,一头扑在她真边,笔者眼,喘这气,嘴里只喃喃地重复三个字;“你活着!你活着!你活着!”他那粗重的喘息声,惊醒了半睡中的陆文婷大夫。他睁开眼来,超他望了,又好象并没有看见他。
    意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能 1

    C 这呆滞的目光,使傅家杰浑身发抖,他失声喊道“文婷!…”陆文婷的眼观又停留在傅家杰脸上,仍然是那种令漠的眼光。这眼光令人胆寒心碎,使人感到她的灵魂已经飞离身躯,正在太空中遨游。
    意味1 1、意味2 3、意味3 1、意味4 2、人工知能 1

    D 傅家杰不知该说些什么,做些什么,才能换回她对生的热望。这是他的妻子,是他在世上最亲的亲人。从那年冬天和她漫游北海,给她念诗,到如今,多少个日日夜夜过去了,她一直是最亲的人。他不能没有她。他要留住她! 意味1 1、意味2 4、意味3 1、意味4 2、人工知能 1

    E 诗!念诗吧!还象当年那样念诗吧!十多年前,是动人的诗句打开了她的心房。今天,再用同样的诗句唤起她最美好的回忆,唤起她对生的欲望和勇气吧! 意味1 1、意味2 1、意味3 1、意味4 1、人工知能 2

    花村嘉英(2022)「谌容の『人到中年』で執筆脳を考える」より

  • 谌容の「人到中年」で執筆脳を考える4

    【データベースの作成】  

    表1 「人到中年」のデータベースのカラム
    項目名 内容      説明
    文法1 態     能動、受動、使役。  
    文法2 時制、相   現在、過去、未来、進行形、完了形。
    文法3 様相   可能、推量、義務、必然。
    意味1 五感   視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。
    意味2 喜怒哀楽   情動との接点。瞬時の思い。
    意味3 思考の流れ 実現ありなし
    意味4 振舞い   ジェスチャー、身振り。直示と隠喩を考える。
    医学情報 メンタルヘルス 受容と共生の接点。購読脳「現実と矛盾」を共生にスライドさせるため、メディカル情報をここに置く。
    情報の認知1 感覚情報の捉え方 感覚器官からの情報に注目するため、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。
    情報の認知2 記憶と学習 外部からの情報を既存の知識構造に組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。その際、未知の情報については、学習につながるためカテゴリー化する。記憶の型として、短期、作業記憶、長期を考える。
    情報の認知3 計画、問題解決、推論 受け取った情報は、計画を立てるときにも役に立つ。目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。獲得した情報が完全でない場合、推論が必要になる。
    人工知能 紆余曲折と光明 エキスパートシステム 紆余曲折とは、事情が込み入っていろいろ変化があること、光明とは、明るく輝く光のこと。 

    花村嘉英(2022)「谌容の『人到中年』で執筆脳を考える」より

  • 谌容の「人到中年」で執筆脳を考える3

    3 データベースの作成・分析

     データベースの作成方法について説明する。エクセルのデータについては、列の前半(文法1から意味5)が構文や意味の解析データ、後半(医学情報から人工知能)が理系に寄せる生成のデータである。一応、L(受容と共生)を反映している。データベースの数字は、登場人物を動かしながら考えている。
     こうしたデータベースを作る場合、共生のカラムの設定が難しい。受容は、それぞれの言語ごとに構文と意味を解析し、何かの組を作ればよい。しかし、共生は、作家の知的財産に基づいた脳の活動が問題になるため、作家ごとにカラムが変わる。 

    花村嘉英(2022)「谌容の『人到中年』で執筆脳を考える」より

  • 谌容の「人到中年」で執筆脳を考える2

    2 谌容の「人到中年」でLのストーリーを考える 
     
     谌容(1936-)は、中国湖北省の武漢市出身で1954年に北京外国語大学に進みロシア語を学んだ。文化大革命(1966-1976)のときは、北京の近郊通県で4年間下放生活を送った。人民の中で人民とともに苦難を味わなければ、人民のためによい小説は書けないということであろうか。
     女医の陆文婷は、眼科医であり治療歴も豊富である。仕事には熱心で日々夜遅くまで自宅で勉強する。亀裂などの金属疲労が専門の夫傅家杰との間に子供が二人いて母として躊躇困窮し、どこかしら受け身でもある。夫もやはり研究熱心である。
     文学作品は、社会における影響を重視する。陆文婷は、特殊な境遇にあるも良き医師、良き妻良き母であろうとする。英雄ではない。しかし忍耐と粘りのイメージから同情を喚起し、社会一般の知識人たちの現状を見つめ直す。人生に直面し、社会の矛盾を直視することは、作家が小説を作るにあたり必然の方法である。それが社会や生活の本質に当たるからである。中年は腕の見せ時で万事が多忙である。
     焦成思次官は、白内障の症状があり手術を要する。白内障は、眼の水晶体が灰白色に変じて濁る病気で、老人性のものが多い。先天性、糖尿病性、外傷性、赤外線による職業病性もある。原爆被害者の場合は、原爆白内障といわれる。焦次官に続いて幼子王小嫚や劉老人も角膜移植の手術を受ける。陆文婷の手術の腕は確かである。
     白内障の原因は、主に加齢であるが、糖化もその一つである。身体の糖化により生成される終末糖化産物(AGEs)が眼の水晶体に溜まると白内障に罹ってしまう。終末糖化産物は、タンパク質に余分な糖質が結びつき加熱されてタンパク質が変性劣化して生まれる。(片野2022)糖化が促進すると活性酸素が増加し身体の酸化が進む。活性酸素はまた糖化も促進するため、負のスパイラルに陥る。 
     陆文婷に異変が訪れる。10年連れ添った傅家杰も覚えがないほど彼女の身体の具合が悪い。通りすがりのトラックで病院の救急室へ運ばれる。静脈注射が打たれ救急措置が始まる。アダムスストーク症状が現れ、心臓打撃機が開けられた。何かの原因で心拍が不規則になり脳への血液量が激減し、眩暈や痙攣、失神などの脳虚血症状を起こす病態である。
     果たして症状は好転した。しかし、病気が家族に与えた不運は、誠に冷淡で冷酷である。傅家杰は、二晩も眠っていない。耐えられないほど心が痛んだ。そして、陆文婷が望む子供の世話を引き受ける。陆文婷を死なせてはならない。彼女の回復を詩で祈る。「人到中年」の購読脳は「現実と矛盾」、執筆脳は「紆余曲折と光明」、シナジーのメタファーは、「谌容と本質」である。

    花村嘉英(2022)「谌容の『人到中年』で執筆脳を考える」より

  • 谌容の「人到中年」で執筆脳を考える1

    1 はじめに

     文学分析は、通常、読者による購読脳が問題になる。一方、シナジーのメタファーは、作家の執筆脳を研究するためのマクロに通じる分析方法である。基本のパターンは、まず縦が購読脳で横が執筆脳になるLのイメージを作り、次に、各場面をLに読みながらデータベースを作成し、全体を組の集合体にする。そして最後に、双方の脳の活動をマージするために、脳内の信号のパスを探す、若しくは、脳のエリアの機能を探す。これがミクロとマクロの中間にあるメゾのデータとなり、狭義の意味でシナジーのメタファーが作られる。この段階では、副専攻を増やすことが重要である。 
     執筆脳は、作者が自身で書いているという事実及び作者がメインで伝えようと思っていることに対する定番の読み及びそれに対する共生の読みと定義する。そのため、この小論では、トーマス・マン(1875-1955)、魯迅(1881-1936)、森鴎外(1862-1922)の執筆脳に関する私の著作を先行研究にする。また、これらの著作の中では、それぞれの作家の執筆脳として文体を取り上げ、とりわけ問題解決の場面を分析の対象にしている。さらに、マクロの分析について地球規模とフォーマットのシフトを意識してナディン・ゴーディマ(1923-2014)を加えると、“The Late Bourgeois World”執筆時の脳の活動が意欲と組になることを先行研究に入れておく。
     筆者の持ち場が言語学のため、購読脳の分析の際に、何かしらの言語分析を試みている。例えば、トーマス・マンには構文分析があり、魯迅にはことばの比較がある。そのため、全集の分析に拘る文学の研究者とは、分析のストーリーに違いがある。言語の研究者であれば、全集の中から一つだけシナジーのメタファーのために作品を選び、その理由を述べればよい。なおLのストーリーについては、人文と理系が交差するため、機械翻訳などで文体の違いを調節するトレーニングが推奨される。

    花村嘉英(2022)「谌容の『人到中年』で執筆脳を考える」より

  • 阿城の「孩子王」で執筆脳を考える9

    4 まとめ    

     阿城の執筆時の脳の活動を調べるために、まず受容と共生からなるLのストーリーを文献により組み立てた。次に、「孩子王」のLのストーリーをデータベース化し、最後に文献で止めたところを実験で確認した。そのため、テキスト共生によるシナジーのメタファーについては、一応の研究成果が得られている。  
     この種の実験をおよそ100人の作家で試みている。その際、日本人と外国人6対4、男女比4対1、ノーベル賞作家30人を目安に対照言語が独日であることから非英語の比較を意識してできるだけ日本語以外で英語が突出しないように心掛けている。

    参考文献

    阿城 孩子王 民族文化派小説(立野祥介訳) 時代文芸出版社 1989
    後藤岩奈 阿城「該子王」(子供たちの王様)原作作品と映画化作品を比較する 県立新潟女子短期大学研究紀要第37号2000
    花村嘉英 計算文学入門-Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風舎 2005
    花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品-魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社 2015
    花村嘉英 日语教育计划书-面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
    花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
    花村嘉英 シナジーのメタファーの作り方-トーマス・マン、魯迅、森鴎外、ナディン・ゴーディマ、井上靖 中国日語教学研究会上海分会論文集 2018
    花村嘉英 小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へ シナジーのメタファーのために V2ソリューション 2023

    花村嘉英(2023)「阿城の『孩子王』で執筆脳を考える」より

  • 阿城の「孩子王」で執筆脳を考える8

    表3 情報の認知  

      同上   情報の認知1 情報の認知2 情報の認知3
    A 表2と同じ。 3      2     1
    B 表2と同じ。 2      2     1
    C 表2と同じ。 2      1      1
    D 表2と同じ。 2      2      1
    E 表2と同じ。 2      2      1

    A:情報の認知1は③その他の条件、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は計画から問題解決へである。   
    B:情報の認知1は②グループ化、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は計画から問題解決へである。  
    C:情報の認知1は②グループ化、情報の認知2は①旧情報、情報の認知3は計画から問題解決へである。  
    D:情報の認知1は②グループ化、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は①計画から問題解決へである。  
    E:情報の認知1は②グループ化、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は①計画から問題解決へである。        

    結果      
     学歴も低いのに教壇に立ち、作文を通して自身の教育理念を生徒たちに伝える物語。聾啞でも力持ちな父が大好きな子供王福は、先生が黒板に書く教材を写して勉強してきた。真面目でクラスの仲間のためによく働き、先生が使っていた字典を貰えることになった。しかし、記録の道理に負けたといい、字典を受け取らずにこれまで通り写すと主張するため、購読脳の「自身の教育理念と面白さの追及」から執筆脳の「ユーモアとプラス思考」という組を引き出すことができる。    

    花村嘉英(2023)「阿城の『孩子王』で執筆脳を考える」より

  • 阿城の「孩子王」で執筆脳を考える7

    【連想分析2】

    情報の認知1(感覚情報)  
     感覚器官からの情報に注目することから、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。このプロセルのカラムの特徴は、①ベースとプロファイル、②グループ化、③その他の条件である。
     
    情報の認知2(記憶と学習)  
     外部からの情報を既存の知識構造へ組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。未知の情報は、またカテゴリー化される。このプロセスは、経験を通した学習になる。このプロセルのカラムの特徴は、①旧情報、②新情報である。

    情報の認知3(計画、問題解決、推論)  
     受け取った情報は、計画を立てるプロセスでも役に立つ。その際、目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。しかし、獲得した情報が完全でない場合は、推論が必要になる。このプロセルのカラムの特徴は、①計画から問題解決へ、②問題未解決から推論へである。

    花村嘉英(2023)「阿城の『孩子王』で執筆脳を考える」より