トーマス・マンとファジィ20


 最初に、Hans Castorp、Dr. Krokowski そして Joachim Ziemßen 三者の距離をファジィ化する。Dr. Krokowski の話し振りは、「かすかな声」、「穏や かな声」そして「飾り気がある」に分類される。また、Hans Castorp の病状に関する特徴は、「軽い」、「中ぐらい」そして「重い」である。それぞれメンバーシップ関数の推移が恣意的に選択される。また、Hans Castorp と Joachim Ziemßen のイロニー的な距離に対してもメンバーシップ値を割り当ててみよう。
 次に、推論規則が立てられる。例えば、「Dr. Krokowski の声に飾り気 があって Hans Castorp の病気が軽けれは、Hans Castorp と Joachim Ziemßen のイロニー的な距離は遠くなる」という規則である。ここで、 和結合に対しては最小値の演算子が、共通結合に対しては最大値の演算 子が使用される。簡易的に一覧表を作ってみよう。実際に、具体的な数字を推論規則の前件にあてはめていく。そして、推論規則の後件を求めるために、次のような推論を適応する。「Dr. Krokowski の声に飾り気があり Hans Castorp の病気が中ぐらいならば、 Hans Castorp と Joachim Ziemßen のイロニー的な距離は近くなる」。また、 「Dr. Krokowski の声が穏やかで Hans Castorp の病気が中ぐらいならば、 Hans Castorp と Joachim Ziemßen のイロニー的な距離は中ぐらい」になる。 さらに、「Dr.Krokowski の声がとても小さいか、または、HansCastorpの 病気が軽けれは、Hans CastorpとJoachim Ziemßenのイロニー的な距離はかなり遠くなる」。
 その結果、イロニー的な距離に関するメンバーシップ関数は、Hans Castorp と Joachim Ziemßen のイロニー的な距離は、3.6mと計算される。

花村嘉英(2005)「計算文学入門-Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より

シナジーのメタファー1


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