ヴァイスゲルバーから日本語教育を再考する2


2 ヴァイスゲルバーの母国語教育の立場
 
2.1 言語分析のための4つのアプローチ

 ヴァイスゲルバーは、言語の分析、特に母国語を考察する際に、音、意味、文法及びことばの運用の問題を取り上げ、例えば、文法に関して考察するとき、単体としてではなく、他の3つの要素も関連づけて考えることを目指した。(Weisgerber 1963、33)つまり、ドイツ民族が母国語を習得する際、音、意味、文法を関連づけて学習しながら、外界の存在と人間の意識の間に位置する母国語の世界像を使用していると考えた。
 私も母国語教育を考えるとき、日本語の音や意味、そして文法の面だけではなく、生活や文化なども含めた日本語の運用について考えることが多い。これにより言語共同体が考察の対象となって世界を言語化するプロセスとしての母国語が特徴づけられる。
 母国語全体の分析対象をまず二つに分ける。一つは、すでにできている静的なもの(エルゴン)、また一つは人の心に働きかけ自らを変革していく動的なもの(エネルゲイア)である。前者には、例えば、音と意味が属し、後者には文法やことばの運用が入る。言語学史の流れで見ると、1960年代はまだ脳科学からの考察が少なかったため、精神や言語による中間世界という概念を用いて母国語の世界像を説明していた。

花村嘉英(2018)「ヴァイスゲルバーから日本語教育を再考する」より


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