D 内外から見た日本円の弱さ
国際的に比較しながら、日本の内外価格差と円の購買力の問題を見てみよう。内外価格差とは、国内と海外の価格の格差を表す指標で、実際には購買力平価を為替レートで÷ことにより求められる。購買力平価とは、日米間で考える、米国において1ドルで買えるものを日本で買うといくらになるかを表すものである。
例えば、為替レートが1ドル=110円であれば、新聞が日本では120円するのに、米国では80円だとすると、購買力平価より円高である。米国に比べて日本では新聞の値段が高く、日米間に内外価格差が存在している。国民生活に直接関連している消費財、サービスの内外価格差の存在は、国内における日本円の弱さを示している。
次に、中心的な債権国としての役割がある。豊富な工業化による経常収支の黒字を対外投資に振り分け、1980年代に入ると日本は米国に代わって世界最大の債権国になった。しかし、資本輸出は自国通貨円建てではなく、依然としてドル建てで行われた。そのため、資本循環の中心位置にあるのではなく、ある意味で、ただの資本供給国にすぎず、米国が中心的資本輸出国の役割を担っていた。
こうした構造は、日本円が国際通貨として使われる比率を下げた。世界貿易における円建て比率は、5%にすぎず、米国ドル、ユーロ、英国ポンドよりも低いと推定される。経済が持続的に低迷する中で、日本円は国際化の道は、さらに難しくなるようである。
7.2 国際貿易と中国人民元
これまで、ドル・円・ユーロなどの主要通貨で構成されていたIMF(国際通貨基金)が扱う仮想の通貨に、2016年10月1日から中国の人民元が正式に組み込まれた。通貨としての国際的な位置づけの高まりの象徴である。人民元の採用でIMFの仮想通貨にはさらなる多様性がもたらされ、グローバルな通貨や経済を一層反映することになるとIMF理事も述べている。
IMFの加盟国が資金を融通する際に通貨のような役割を果たすSDR(特別引き出し権)は、為替変動の影響を抑えるため、アメリカドル・日本円・イギリスのポンドとユーロの4つの通貨を混ぜるかたちで構成されていた。しかし、中国の主張に応じて、IMFは去年、中国の人民元が国際的な決済が可能な通貨としての条件をクリアすると判断し、5つ目の構成通貨への採用を決めていた。
人民元の構成比率は10.92%と、円を超えて、アメリカドル、ユーロに続く3番目の大きさで、国際的に使用でき、信用できる通貨としてのいわばお墨付きが与えられたかたちとなった。
【参考文献】
楊立国編 日本経済入門 大連理工大学出版社 2011
花村嘉英 日本経済入門の講義(宁波大红鹰学院)2015