日本経済入門の講義10


B 日本の農業の構造上の特徴とその背景
 基本的な指標である農業生産指数や耕地面積などの推移を次の表に示す。
2000年を100とすると、1960年が80であったから、40年間で25%の増加、年率だと平均0.56%ずつ増加している。しかし、耕地面積、農業就業人口、農家戸数ともに、1960年以来一貫して減少傾向にある。2003年の善光区平均の農家の所得は、1戸当たり771万円で、勤労世帯の630万円を上回っていたが、農業所得は14%にすぎず、年金や他の仕事による所得で成り立っている。また、農業就業者の高齢化が進み、労働力不足は、農業構造をじゃ期待かさせる恐れがあり、それを回避するためには、新規就農者を増やすための制作が必要である。
 1961年に制定された農業基本法は、20世紀後半の日本の農業政策の理念と試作の基本的方向を示すものといってよい。1993年に成立されたWTO農業協定が日本の農業に大きな影響を与えた。
 WTO農業協定は、三つの分野から成り立っている。輸入国の市場を開放する市場アクセス、輸出削減の補助金を求める輸入競争、貿易に影響する国際政策の削減を盛り込んだ国内助成である。日本の関心事は、コメの関税化による市場アクセスである。コメについては、関税化猶予となったが、その代償として、ミニマム・アクセス(最低輸入義務)の数量を加重することになった。

C 産業空洞化の原因とその影響
  1985年のプラザ合意以降、急激な円高につれ、日本企業は次々と海外(特にアジア地域)に進出し、生産拠点を世界範囲に拡大させた。海外移転の理由としては、第一に人件費の安さ、第二に現地市場の開拓が挙げられる。
 特に、製造業で海外移転が進めば、その裏返しの減少として、閉鎖に追い込まれる国内工場が増えるはずである。2001年の一年だけでも69社、124工場が閉鎖に追い込まれ、2002年に入ると、高区内工場の閉鎖、休止はさらに増えた。いわゆる産業の空洞化である。
 工場閉鎖・休止の主な原因は3つある。第一は、事業統合や企業の合併・買収に伴う例が急増していることである。第二は、将来性のない事業からの撤退を決め、工場の閉鎖・休止でその数は47社にのぼる。第三は、顧客企業の海外生産拡大に対応して、国内から海外に工場を移す企業もある。電気や情報の製造拠点の移転が急速に進んでいる。
 国内工場で閉鎖した企業の多くがアジア地域へ生産拠点を移しており、最近では大手メーカーがアジアでの生産拠点を再編する動きが始まった。主に、拠点集中化と分散化の動きがある。例えば、トヨタ自動車は、2004年からタイでピックアップトラックの生産量を念7万代から20万台へと約3倍に増やし、アジアやヨーロッパへの輸出起点にしている。タイには、ホンダ、米GM、独BMWなどが進出しているため、部品調達も便利なことから、トヨタはタイに集中したわけである。

花村嘉英(2017)「日本経済入門の講義」より


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