人文科学から始める技術文の翻訳7


2.4 時制

 技術文は、製品の技術的な内容が意識されているため、詳細な時間の説明よりも、「AをするとBになる」といった操作の説明の方が多い。時制で言えば、現在形の使用頻度が高いのも当然である。

(62)メーターの揺れが最大許容範囲を超えたら、ディスクを交換しなければならない。
(63)If the meter deflects in excess of the maximum allowable limit, the disc must be relaced.

但し、操作の流れの中では完了形が使用される。
 
(64)新しいプロジェクトを判定するのに必要な情報は、ほとんどすべて収集し終えた。
(65)They have collected almost all information necessary to evaluate a new project.
(66)車両駐車は多くの工場や配送センターなどで深刻な問題になっている。
(67)Parking has become a serious problem at many industrial plants and distribution centers.

 (64)と(65)は、動作の完了を表している。つまり、ある動作が現時点で完了していることが説明されている。一方、(66)と(67)は、動作の後の結果を表している。
 完了形にはさらに経験(68)、(69)や状態の継続(70)、(71)に関する用法がある。

(68)過去にも同じ問題を経験している。
(69)They have experienced the same problem in the past.
(70)石油は電力回路に使用される標準的作動油である。
(71)Petroleum oils have been the standard hydraulic fluid used in power circuit.

花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です