また、μは加法性を持つとは限らない。AとBをXの互いに素な任意の部分集合とし、グループAとグループBが一緒に働く場合を考えてみよう。もしAとBが互いに何の影響も及ぼさず、全く独立して作業するなら、等式μ(A∪B)=μ(A)+μ(B)が成り立つ。しかし、一般にはAとBは互いに干渉し合うため、この等式は成立しない。両グループのメンバーが効果的に協力しあえば、
(7)μ(A∪B)>μ(A)+μ(B)
となるだろうし、逆に人数が多くなりすぎて、作業がかち合い、効率が悪くなれば、
(8)μ(A∪B)<μ(A)+μ(B)
となるであろう。
作業のかち合いは、例えば、設備や作業スペースが十分でないときに起こる。これらが十分であれば、AとBは別々にかち合わないで作業ができる。実際には、効果的な協力と作業のかち合いの両方が起こることが考えられる。そのため、協力の度合いがかち合いの度合いより大きければ、不等式(7)となり、その逆になれば、反対向きの不等式(8)になる。この例は、作業員間の作業効率に関する相互作用があるため、ファジィ測度が部分集合間の相互作用を表しているといえる。(菅野 1993)
花村嘉英(2019)「「ヨセフとその兄弟」の「ヤコブ物語」から見えてくるファジィ測度について」より