Thomason(1972)は、(24)のような述語の誤った種類への適用から生じた表現を分類上不正確(sorial incorrectness)と呼び、それに対して真理値はないと考えている。*
(24)Der Schatten der Zentralheizung ist warm.
(24)の否定が一見真であるようにみえる。しかし、否定には、選択的な意味(ある選択をすることがすでに他を選択している)と排他的な意味(単に否定されることが拒絶される)があるとして、(24)の否定を前者の意味と考え、真理値付与の対象外として扱っている。* では、真でも偽でもない表現は、どこに位置づけられるのであろうか。
諸々の特性なり役割からなる論理空間(Logical Space: LS)があるとする。* これは、ある種の概念上の資源から生成される。LSにおける形式言語Lには、二項述語QにLSの部分集合(LSの構成要素の順序対の集合)を割り当てる分類上の指定Eがある。* この部分集合(Eの地域)は、Qが肯定も否定もされうる点を含んでいる。
(24)の所在地は、ここである。言語Lには、Eと関連して二項述語QにE(Q)の部分集合s(Q)(sは指標<i, j>)を当てるsが存在する。すなわち、ILの基本表現に指示対象を対応付けるために、ここでは、PTQとは異なる二段階の手順を踏んでいる。
M、i、j、gに関するILの有意表現αの外延記述を(25)の形に修正する。
(25)αM,E, i, j, g
s(Q)を設けることにより、LS中の点pを占める個体Qv1, v2(v1, v2はそれぞれ個体変項)を満たすように、pの集合を指定することができ、spielen‘‘が項としてdie-erste-Geigeだけを選択することが説明される。
花村嘉英(2022)「モンタギュー文法からGPSGへ-イディオムの構成性をめぐるモデル理論の修正」より