素性と素性値の対の集合からカテゴリーが構成される。* この対は、素性値指定と呼ばれる。(4)のNPを正確に記すと、それは、次のような素性値指定の集合と考えられる。但し、カテゴリーのNと素性のNを混同してはならない。
(5)NP=[N, +], [V, -], [BAR, 2], [PLU, -], [PER, 3], [CASE, NOM]]
カテゴリーには、主要なものと副次的なものとがある。前者は、N、V、A、Pおよびそれらの投射、後者は、Det(限定詞)、CONJ(接続詞)、COMP(補文標識)などで、これらは、BAR素性の値を欠いている。しかし、GPSGでは、BAR指定がなくてもSUBCATが指定されていれば、語彙カテゴリーのメンバーなのである。*
(6)A=[N, +], [V, -]
B=[N, +], [PLU, -]
Unif(A, B) =extension(A) =extension(B)
(6)は、Unif(A, B)がカテゴリーA、 Bの合成([N, +], [V, -], [PLU, -])を値とする関数で、それがAとBのそれぞれに含まれるすべての素性値指定を拡張したものになるということを表している。カテゴリーA、Bのユニフィケーションとは、A、Bの拡張であり、かつ最小のカテゴリーを求めることである。*
素性間には、その一定の依存性を表したFCRがある。*
(7)FCR1 [BAR, 0] =[N]&[V]&[SUBCAT]
FCR2 [BAR, 1] ⊃~[SUBCAT]
FCR3 [BAR, 2] ⊃~[SUBCAT]
FCR4 [NULL, +] ⊃[SLASH]
FCR1は、あるカテゴリーが[BAR, 0](語彙的主要部)となるには、N、V、SUBCATに関する素性の指定がある時に限るという意味である。FCR2とFCR3は、語彙的主要部の当社が下位カテゴリー化をせず、SUBCATの値を持つことはないといっている。また、FCR4により、NULLから足素性値SLASHが導かれる。NULLは、FFPの説明の際、再び取り上げる。
素性と素性値が取る通常値を指定するためにFSDがある。*
(8)FSD1 ~[NULL]
FSD2 ~[NOM]
FSD3 [INV, -]
FSD1とFSD2は、素性[NULL]と素性値[NOM]が有標であることを、FSD3は、限られた場合に等値が起こることを表している。
花村嘉英(2022)「イディオム-モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ」より