6 まとめ
「道ありき」の執筆脳を「虚無とうつ」にした。作家の執筆脳は、問題解決の場面で強い思考が働くため、これまで主にそうした場面を扱ってきた。しかし、病跡学へ寄せる場合は、未解決の場面も考察対象に含めることにし、今回は作者がうつの症状の中で推論を続ける様子を考察した。購読脳の「虚無と愛情」と執筆脳の「虚無とうつ」には一応相互作用があるため、シナジーのメタファーは、「三浦綾子と虚無」にする。
病跡学の研究は、滑り出したところである。目的、効果、目標、メリットを見ていくと、他系列とのクロスした実績を作る際、人文と医学の組み合わせが最も遠い。例えば、人文から見ると、健康科学の勉強はしても別段自分の研究としてまとめる必要はない。しかし、遠いところの調節ができれば、調整力がついてきた証拠になる。
今回のシナジーのメタファーは、狭義の意味で考察されている。しかし、一方に広義のシナジーのメタファーがある。広義のシナジーのメタファーは、ミクロ、メゾ、クラウド、マクロからなる。ミクロでは機械翻訳や特許翻訳の実績が土台となり、メゾにはボトムアップで購読脳と執筆脳からなる3Dの箱が溜まる。クラウドからトップダウンで仮説や推定によりメゾのデータを束ねる指令(〇〇社会学など)が出て、マクロの結論が導かれる。こうした作業を繰り返すことで人文からマクロに通じるシステムが構築される。
なお、シナジーのメタファーについては、2021年3月に日本国特許庁より商標権の登録許可がおりている。
参考文献
日本成人病予防協会監修 2014 健康管理士一般指導員受験対策講座テキスト3 ヘルスケア出版
高橋正雄『うつ病者としてのマックス・ウェーバー』日本病跡学雑誌59 22-31 2000
花村嘉英 『計算文学入門-Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?』新風舎 2005
花村嘉英『「狂人日記」から見えてくるカオス効果について』 四川外国語大学国際シンポジウム 文化の越境と他者の表象 2013
花村嘉英『从认知语言学的角度浅析鲁迅作品-魯迅をシナジーで読む』華東理工大学出版社 2015
花村嘉英『森鴎外の「山椒大夫」のデータベース化とその分析』中国日语教学研究会江蘇分会 華東理工大学出版社 2015
花村嘉英 『日语教育计划书-面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで』南京東南大学出版社 2017
花村嘉英『从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲』 華東理工大学出版社 2018
花村嘉英『シナジーのメタファーの作り方-トーマス・マン、魯迅、森鴎外、ナディン・ゴーディマ、井上靖』中国日语教学研究会上海分会論文集 2018
花村嘉英 『川端康成の「雪国」に見る執筆脳について-「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ』 中国日语教学研究会上海分会論文集 2019
花村嘉英『社会学の観点からマクロの文学を考察する-危機管理者としての作家について』中国日语教学研究会上海分会論文集 2020
牧野雅彦『マックス・ウェーバー入門』平凡社 2006
三浦綾子『道ありき(青春編、結婚編、信仰入門編』新潮文庫 2004