トーマス・マンとファジィ17


 Hans CastorpのChauchat婦人に対する距離(3.4 m) をファジィ化する。考察される特徴は、「近い」、「中ぐらい」そして「離れている」である。最初に個々のファジィ集合を確定し、次にメンバーシップ関数の推移を恣意的に選択する。ファジィ化では、所与の事柄に対してメンバ ーシップ値を割り当てることが重要になる。また、メンバーシップ関数の推移は、後で修正することができる。
 Hans Castorpは、Chauchat 婦人の脇に座り、謝肉祭を祝う療養所の住民たちの舞踏会を見物する。Chauchat 婦人は、Hans Castorp がかねてから興味を持っていた女性であるる。会場でChauchat 婦人を見っけたHans Castorpは、彼女が謝肉祭用に着飾っていることに気がつく。衣装のことをたずねたりダンスに誘ったりもするが、彼女からは、色よい返事が 返ってこない。気を引こうとして得意のフランス語を使って話しかけてみると(Hans Castorpの二次記憶)、従兄弟の方はもう退場したけどあなたはまだここにいるのという返事。Hans Castorp は、ドイツ人に対して融通のきかない小事にこだわるイメージがあるのかと聞き返す。
 こうしたやりとりをしながら、Chauchat 婦人の隣に座っていることが Hans Castorp には夢のようで、まるで深い永遠の眠りに陥るかのような気持ちであった。一方、Chauchat 婦人は、ドイツ人をブルジョワ、ヒューマニ ストそして詩人として特徴づける。

花村嘉英(2005)「計算文学入門-Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より

シナジーのメタファー1


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