サピアの「言語」と魯迅の「阿Q正伝」7


 次に、五感や記憶から意識・無意識までも交えて、阿Qが演じる「馬々虎々」に関連する言動を見ていこう。表3は、一対一の中文と和文ではなく、ストーリーを掴むための場面の対照表である。
 また、データの処理については、一応プロセスを設けている。阿Qの場合、解析イメージは、「記憶と馬虎」という組み合わせになる。これを「記憶とカオス」という生成イメージに近づけるため、場面を作業単位にしてL字の解析と生成を繰り返していく。阿Qの言動に関する主な入力と出力を確認していこう。

第1章 序
(1)
中文
我要做这一篇速朽的文章,便感到万分的困难了。第一是文章的名目。第二,我并不知道阿Q姓什么。第三,我又不知道阿Q的名字是怎么写的。第四,籍贯也就有些决不定。
和文
この一篇の朽ち易い文章を作るにあたり、甚だしく困難を感じた。第一に題目の設定が難しい。第二に阿Qの姓名が不明である。第三に阿Qの名がどういう字なのか分からない。第四に阿Qの本籍地も不明である。

第2章 勝利の概略
(2)
中文
最恼人的是在他头皮上,颇有几处不知于何时的癞疮疤。未庄的閑人们便愈喜欢玩笑他。“哙,亮起来了。”阿Q照例的发了怒,他怒目而视了。
和文
とりわけ人に嫌われるのは、彼の頭の表面のあちこちに、いつできたとも知れない瘡禿があることであった。
未庄の閑人たちは付け上がって彼を嬲りものにした。「おや、明るくなったな。」阿Qは怒り出して、目をむいて睨む。(五感)
(3)
中文
“原来有保险灯在这里!”他们并不怕。“你还不配。”这时候,又仿佛在他头上的是一种高尚的光容的癞头疮,并非平常的癞头疮了。
和文
閑人たちは一向に平気で、「なんと、安全ランプがここにある。」「おまえらにはあるまい。」この時、阿Qの頭にあるものは、高尚で光栄ある瘡禿であって、普通の瘡禿ではない。
(4)
中文
他有这一种精神上的胜利法。
“阿Q,这不是儿子打老子,是人打畜生。自己说,人打畜生!”
“打虫豸,好不好?我是虫豸-还不放么?”
他觉得他是第一个能够自轻自贱的人,除了“自轻自贱”不算外,余下的就是“第一个”。
和文
阿Qには精神的な勝利法がある。
「これは息子が親父を殴るんではないぞ。人間が畜生を殴るんだ。自分で言ってみろ。人間が畜生を殴るんだ。」
「虫けらを殴るんだ、これでいいかい?おいらは虫けらだよ-もう放してくれよ。」
阿Qは自分を自ら軽んじ自ら賤しむことができる第一人者だと思っている。そこから「自ら軽んじ自ら賤しむ」を除くと、残りは「第一人者」だけになる。(この妙計が阿Qの勝利法。)

第3章 続・勝利の概略
(5)
中文
他看见王胡在那里赤着膊捉虱子。他忽然觉得身上也痒起来了。
和文
阿Qはひげの王が肌脱ぎになって虱を取っているのを見た。自分の体までが痒くなってくるのを覚えた。(五感)
(6)
中文
阿Q非常渺视他。阿Q以为他要逃了,抢进去就是一拳。这拳头还未达到身上,已经被他抓住了,王胡一连给他碰了五下。在阿Q的记忆上,这大约要算是生平第一件的屈辱。
和文
阿Qはひげの王をすこぶる軽蔑していた。阿Qはひげの王が逃げようとしていると思い、飛びかかり殴りかかった。その拳骨がまだ相手の身体に届かぬうちに彼に捕まって、壁に五回ぶつけられた。阿Qの記憶では、これがおそらくこの頃の最初の屈辱である。(記憶)
(7)
中文
远远的走来了一个人,就是钱太爷的大儿子(“假洋鬼子”,“里通外国的人”)。阿Q一见他,一定在肚子里暗暗的咒骂。阿Q龙其“深恶而痛绝之”的,是他的一条假辫子。
和文
銭太爺の長男(にせ毛唐、外国人の一味)がやって来た。阿Qは一目見て、腹の中で罵倒する。阿Qがとりわけ「深く悪みて之を痛しく絶った」のは、彼のかつらの辮髪であった。(五感)
(8)
中文
“秃儿”, 阿Q便不由的轻轻的说出来了,这秃儿大踏步走了过来,打在自己头上了。在阿Q的记忆上,这大约要算是生平第二件的屈辱。“忘却”这一件祖传的宝贝也发生了较力。
和文
「坊主頭」と阿Qは思わず小さく口に出してしまった。「坊主頭」は大またで近づいてきて、阿Qの頭を打った。阿Qの記憶では、これが恐らくこの頃の二度目の屈辱といってよい。(記憶)忘却という祖先伝来の宝がまたも効力を発揮した。
(9)
中文
阿Q便在平时,看见小尼姑也一定要唾骂,而况在屈辱之后呢?他于是发生了回忆,又发生了敌忾了。
“秃儿!快回去,和尚等着你。”
“你怎么动手动脚。”
“和尚动得,我动不得?” 他扭住伊的面颊。
和文
阿Qは普段でも、尼を見ると唾を吐きかけてどなりたくなる。屈辱の後故に、記憶を蘇らせて、敵愾心を起こした。(記憶)
「坊主頭、早く帰れ、和尚さんが待っているぞ。」
「どうしてふざけるのです。」
「和尚さんならふざけてもよいが、俺はいかんのか。」阿Qは彼女のほっぺたをつねった。

第4章 恋愛の悲劇
(10)
中文
他是永远得意的。
“断子绝孙的阿Q!”他想,应该一个女人。
阿Q本来也是正人,他对于“男女之大防”却历来非常严。
他将到“而立”之年,竟被小尼姑害得飘飘然了。
和文
阿Qは永遠に得意である。
「跡取りなしの罰あたりの阿Q!」女がいなければいかん。
阿Qも本来まじめな人間で、「男女の掟」には厳格である。
阿Qは三十になってついに若い尼に悩まされ、フラフラになったことがある。(記憶)
(11)
中文
吴妈是赵大爷家里的女仆,洗完了碗碟, 也就在长凳上坐下了,而且和阿Q淡闲天。
阿Q放下烟管,站了起来。“我和你困觉,我和你困觉!”。阿Q忽然抢上去,对伊跪下了。
和文
吴妈は趙家の女僕であった。皿小鉢を洗い終わると彼女も腰掛けに座り、阿Qと無駄話をした。
阿Qは煙管を置いて立ち上がった。突然、「俺と寝よう、俺と寝よう」と言って、早足に歩み寄り下女に膝まづいた。
(12)
中文
那秀才便拿了一支大竹杠。大竹杠又向他劈下来了。阿Q两手去抢头,拍的正打在指节上,这可恨有些痛。他那“女・・・”的思想却也没有了。
和文
秀才が大きな竹の棒を持っていて、それが真っ向から阿Qめがけて振り下ろされた。阿Qは両手を抱頭に抱えていた。当たったところはちょうど指の真上で、本当に痛かった。女・・・という思いは消えた。(記憶)
(13)
中文
吴妈只是哭。赵大爷向他奔来,而且手里捏着一支大竹杠。他看见这一支大竹杠,便猛然间悟到自己曾经被打似乎有点相关,翻身便走。
和文
下女がずっと泣いている。趙太爺が大きな竹の棒を持って、阿Q目掛けてかけてきた。阿Qはこの竹の棒を見て、自分が前に打たれたことに関わることだと悟って、身を翻して逃げた。(記憶)
(14)
中文
然而地保进来了,订定了五条件。阿Q自然都答应了。
和文
そうこうするうちに村の役人がやってきて、五カ条の取り決めを結ぶ。阿Qはもちろん承諾した。

第5章 生計問題
(15)
中文
这小子竟谋了他的饭碗去。这一场“龙虎斗”似乎并无胜败。
和文
阿Qは小Dに仕事を取られた。この「竜虎の戦い」の一幕は、決着がつかなかった。
(16)
中文
阿Q在路上走着要“求食”,终于走到静修庵的墙外了。他便赶紧拔起四个萝卜,待三个萝卜吃完时,他已经打定了进城的主意了。
和文
阿Qは食を求めて歩き続け、ついに静修庵の堀の外まで来た。菜園の大根を四本抜いて三本食べ終わったとき、阿Qはもう町へ行く決心を固めていた。

第6章 中興の末路
(17)
中文
阿Q回来了。这一件新闻便传遍了全未庄。他是在举人老爷家里帮忙。据阿Q说,他的回来,似乎也由于不满意城里人。
和文
阿Qが帰ってきたニュースは未庄全体に広まった。阿Qは挙人老爺の家で働いていたという。阿Qの話によると、彼が帰ってきたのは、城内の人に不満があったかららしい。
(18)
中文
然而不多久,这阿Q的大名忽又传遍了未庄的闺中。邹七嫂在阿Q那里买了一条蓝绸裙,赵白眼的母亲也买了一件孩子穿的大红洋纱衫。
和文
そうこうして阿Qの評判は未庄の女部屋にも広まった。邹七嫂は阿Qから一枚の納戸絹を買い、赵白眼の母親も一枚の子供用の真っ赤な羽織を買った。
(19)
中文
干是家人决议,便托邹七嫂即刻去寻阿Q。
赵太爷踱开去,眼睛打量着他的全身,一面说,“听说你有些旧东西,可以都拿来看一看。”
都完了。阿Q虽然答应着,却懒洋洋的出去了。
和文
趙家の人達が決議をして、邹七嫂に頼んで阿Qを呼んで来るように言った。
趙太爺が近づいてきて、阿Qの全身を見て言った。「古着をたくさん持っているそうだな。こちらに持ってきて見せるがいい。」 
品物が完売しているため、阿Qは注文の返事をしたものの、気の進まない様子で出て行った。
(20)
中文
只有一班闲人们却还要寻根究底的去探阿Q的底细。阿Q也并不讳饰,傲然的说出它的经验来。
他们才知道,他不过是一个小脚色。只站在洞外接东西。他爬出城,逃回未庄来了。
和文
閑人が阿Qの内情を根掘り葉掘り探る。阿Qも隠しだてせずに、威張って自分の経験を話した。 
閑人は阿Qが端役に過ぎないことを知る。彼は外に立って品物を受け取っただけ。そして、慌てて町から抜け出して、未荘に逃げて帰ってきた。

第7章 革命
(21)
中文
宣统三年九月十四日,有一只大乌篷船到了赵府上的河埠头。谣言很旺盛。
未庄的一群鸟男女的慌张的神情,也使阿Q更快意。
“革命也好罢,” 阿Q想, “革这伙妈妈的命。太可恶!太可恨! 便是我,也要投降党革命了。”
和文
宣統3年9月14日、一艘の大きな黒い篷船が趙家の桟橋に着いた。デマが乱れ飛んだ。
未荘村のクソ野郎の慌てふためく様子は痛快。
「革命もいいものだ。」と阿Qは思った。「こいつらを革命してやる。憎むべきだ!恨むべきだ!俺も革命党に寝返ってやる。」
(22)
中文
忽而似乎革命党便是自己,未庄人却都是他的俘虏了。禁不住大声的嚷道,“造反了!造反了!”
未庄人都用了惊惧的眼光对他看。这一种可怜的眼光,是阿Q从来没有见过的。
和文
突然、自分が革命党で未荘の人々が自分の捕虜のような気がして、「謀反だ、謀反だ」と叫ぶ。
未荘の人々は驚き恐れるような目つきで阿Qを見た。その憐れむべき目つきを阿Qはこれまで 1度も見たことがなかった。(同期/非同期)
(23)
中文
第二天他慢慢的跨开步,有意无意的走到静修庵。“革过一革的”,老尼姑说。
阿Q很出意外,不由的一错愕。
和文
次の日、のろのろ歩いているうちに、いつの間にか静修庵へ来ていた。尼僧から「革命は終わった」ことを聞く。
阿Qは全く思いもかけなかったため、驚いてうろたえる。(五感)
(24)
中文
赵秀才去拜访那历来也不相能的钱洋鬼子。立刻成了情投意合的同志,也相约去革命。
静修庵里有一块“皇帝万岁万万岁”的龙牌。龙牌已经碎在地上了,而且又不见了观音娘娘坐前的一个宣德炉。
阿Q深怪他们不来招呼他。“我已经投降了革命党。”
和文
趙秀才はこれまで付き合いがなかったにせ毛唐を訪問し、意気投合して革命に進んだ。
静修庵に「皇帝万歳万万歳」の竜牌があった。この位牌は砕けて地上に転がり、観音様の前にあった宣徳時代の香炉も見当たらない。(記憶)
阿Qは自分を誘わなかったことを怨んだ。「阿Qはすでに革命党に寝返っている。」

第8章 革命許さず
(25)
中文
革命党虽然进了城,只有一件可怕的事是动手剪辫子。几天之后,将辫子盘在顶上的逐渐增加起来了。最先自然是茂才公,其次便是赵司晨和赵白眼,后来是阿Q。赵司晨走来,看见的人大嚷说,“革命党来了!”阿Q听到了很羡慕。
和文
革命党が町に入ったが、恐ろしい事といえば、辮髪切りぐらい。数日たつと、未荘村でも辮髪を巻き上げる人が増えてきた。秀才、趙司晨、趙白眼、そして阿Qと続いた。趙司晨は革命党とはやし立てられた。阿Qはそれを聞いてうらやましく思った。(五感)
(26)
中文
他在街上走,人也看他,然而不说什么话。阿Q当初很不快,后来便很不平。
和文
阿Qが辮髪を巻き上げて、町を歩いていても、人々は何も言わない。阿Qは不愉快で不満に思う。(五感)
(27)
中文
小D也将辫子盘在头顶上了。阿Q万料不到他也敢这样做。
和文
小Dも辮髪を巻き上げていた。阿Qは夢にも思わなかった。(五感)
(28)
中文
进城去的只有一个假洋鬼子。赵秀才托假洋鬼子给自己绍介绍介,去进自由党。假洋鬼子回来时,向秀才讨还了四块洋钱。秀才便有一块银桃子挂在大襟上了。赵太爷因此也骤然大阔,见了阿Q,也就很有些不放在眼里了。阿Q正在不平,又时时刻刻感着冷落。
和文
にせ毛唐が町へ行き、趙秀才は彼の紹介で自由党に入った。帰ってくると、にせ毛唐は秀才に立替金として銀貨四円を請求した。秀才は襟に銀の桃をつけるようになった。趙太爺は威張りだし、阿Qに会っても目もくれない。不満のおり、刻々零落を感じた。(五感)
(29)
中文
要革命,第一着仍然要和革命党去结识。他
除却赶紧去和假洋鬼子商量之外,再没有别的道路了。
他一到里面,只见假洋鬼子正站在院子的中央,一身乌黑的大约是洋衣,已经留到一尺多长的辫子都拆开了披在肩背上,赵白眼和三人闲人正在听说活。
和文
革命するには革命党と知り合いになる必要がある。急いでにせ毛唐に相談するしかない。
銭家の中に入ると、にせ毛唐が広場の真ん中に立ち、真黒な洋服を着て、一尺余りの辮髪は肩の上にほどき、趙白眼と三人の閑人が話を聞いている。
(30)
中文
洋先生不谁他革命,他所有的抱负,志向,希望,前程,全被一笔勾销了。他似乎从来没有经验过这样的无聊。
和文
にせ毛唐は阿Qに革命を許してくれない。彼が持っていた抱負、志向、希望、前途は、すべて帳消しになった。これまでにない、やるせない気持ち。
(31)
中文
他忽而听得一种导样的声音。一个人从对面逃来了。看那人便是小D。“赵家遭抢了!”阿Q的心怦怦的跳了。
和文
突然、ある種の異様な音を聞いた。逃げていく男がいる。小Dだ。趙家が襲われたという。阿Qの胸はどきどきと跳ねた。(五感)
(32)
中文
干是蹩出路角,仔细的听。两只脚却没有动。阿Q站着看到自己发烦。
和文
阿Qは道の角からそっと出て、じっと聞き耳を立てた。両足が動かない。立って見ているうちにイライラしてきた。(五感)
(33)
中文
没有自己的份,这全是假洋鬼子可恶,不谁我造反。阿Q越想越气,终于禁不住满心痛恨起来。
和文
分け前がない。これは全くあのにせ毛唐が憎たらしくも謀反を許さなかったからだ。阿Qは考えれば考えるほど腹が立ち、痛恨を抑えきれない。

第9章 大団円
(34)
中文
四天之后,阿Q在半夜里忽被抓进县城里去了。两个团丁将阿Q抓出来。他虽然有些忐忑,却并不很苦闷。“因为我想造反。”
和文
四日たったとき、阿Qは夜中に突然町へ引っ張られていった。二人の民兵が阿Qを捕まえた。阿Qは動揺するも、くよくよしない。謀反を考えたためだ。
(35)
中文
他到得大堂,上面座着一个老头子。他便知道这人一定有些来历,膝关节立刻自然而然的宽松,便跪了下去了。
和文
阿Qは役所の正堂に連れ込まれた。正面に老人が座っている。この人がいわくのある人と分かり、阿Qは膝の関節ががくがくし、ひざまずいてしまった。(五感)
(36)
中文
许多长衫和短衫人物,忽然给他穿上一件洋布的白背心。阿Q很气苦,因为这很像是带孝,而带孝是晦气的。
和文
長衣や短衣を着た人が突然阿Qにキャラコの白い袖なしを着せた。喪服に似ていて、縁起が悪いので、阿Qは気がクサクサした。(記憶)
(37)
中文
阿Q被拾上了一辆没有篷的车,几个短衣人物也和他同坐在一处。这车立刻走动了,前面是一班背着洋炮的兵们和团丁,两旁是许多张着嘴的看客,后面,阿Q没有见。
但他突然觉到了,这岂不是去杀头么?
和文
阿Qは幌のない車に押し上げられた。数人の人も一緒に乗った。車はすぐに動き出した。前方は鉄砲を担いだ兵隊と自衛団が歩いていた。両側は大勢の見物人が口を開けて見ていた。後ろは見えなかった。(同期/非同期)
しかし、突然打ち首になると感じた。(五感)
(38)
中文
他意思之间,似乎觉得人生天地间,大约本来有时也未免要杀头的。
这是在游街,在示众。阿Q省悟了,这是绕到法场去的路。
和文
人として、天地に生まれてきた以上、もともと打ち首になることも仕方がないという思いがある。引き回しや見せしめになっている。刑場まで遠回りをしていることに気がつく。
(39)
中文
在路旁的人丛中发见了一个吴妈。很久连。
阿Q忽然很羞愧自己没志气,竟没有唱几句戏。
“好!”从人丛里,便发出豺狼的嗥叫一般的声音来。
和文
路端の人々の群れの中に吴妈を見つけた。久しぶりだ。(同期/非同期)
阿Qはしょんぼりとして、芝居の歌も歌えないことが恥ずかしい。
「いいぞ!」人混みの中に狼の吠えるような声が湧き上がった。
(40)
中文
阿Q于是再看那些喝采的人们。
四年之前,他曾在山脚下遇见一只俄狼。
和文
もう一度、喝采している人を見た。(同期/非同期)
阿Qは4年前に山麓で会った飢えた狼のことを思い出す。(記憶)
(41)
中文
可是永远记得那狼眼睛。又凶又怯,闪闪的像两颗鬼火,似乎远远的来穿透了他的皮肉。他又看见从来没有见过的更可怕的眼睛了,不但已经咀嚼了他的话,并且还要咀嚼他皮肉以外的东西,永是不近不远的跟他走。
和文
狼の目のことはいつまでも覚えている。凶悪でキラキラとして鬼火のように、遠くからでも彼の肉体を刺し通す。これまでに見たこともない恐ろしい目(記憶)。彼の言葉だけでなく、肉体以外のものも噛み砕こうとする。近づきも離れもせずに、阿Qについてくる。(同期/非同期)
(42)
中文
这些眼睛们似乎连成一气,已经在那里咬他的灵魂。他早就两眼发黑,耳杂里嗡的一声,觉得全身仿佛微尘似的进散了。
和文
それらの目が一つになった(記憶)かと思うと、彼の魂に噛みついていた。阿Qは目の前が真っ暗になり、耳がガーンとなって、全身が飛び散っていくような気がした。(五感)
(43)
中文
至于舆论,在未庄是无异议,自然都说阿Q坏,被枪毙便是他的坏的证据。而城里的舆论却不佳。游了那么久的街,竞没有唱一句戏。
和文
世論について未荘では異議がなく、当然誰もが阿Qが悪いと言った。銃殺されたのは、彼が悪い証拠である。町の世論もよくなかった。長いこと街を引き回されたのに、阿Qは芝居の歌も歌えなかった。

 (3)、(4)、(8)は、阿Qの精神的な勝利法を意味する妙計の説明になっている。通常、人に殴られて壁にぶつかれば、誰でもよく思うわけがない。阿Qの神経細胞が入力情報を伝えるため、出力が精神的な勝利の意味になれば、彼の勝利法はカオスの意味に近づいていく。また、(21)の内容は、魯迅が中国の社会を救済するために、肉体よりも精神の改造を求めたことを裏づけている。 

花村嘉英(2015)「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品-魯迅をシナジーで読む」より


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