1.2 言語構造の類型
諸言語を分類するために、世界中の言語の文法過程を研究し続けたサピアは、言語概念を次の4つに分類した。(Ⅰ)根本概念、(Ⅱ)派生概念、(Ⅲ)具体的関係概念、(Ⅳ)純粋関係概念。(サピア:1998)
根本型 派生概念(Ⅱ)具体的関係概念(Ⅲ)純粋関係概念(Ⅳ)手法(融合度)総合度 例
A単純な純粋関係(中国語)(Ⅱ)―(Ⅲ)― (Ⅳ)a 手法 孤立的 総合 分析的
B複雑な純粋関係(ポリネシア語)(Ⅱ)b, (d) (Ⅲ)―(Ⅳ)a 手法 膠着的孤立的 総合 分析的 (日本語)(Ⅱ)b (Ⅲ)b(Ⅳ)b 手法 膠着的 総合 分析的
C単純な混合関係(フランス語)(Ⅱ)(c) (Ⅲ)c, (d)(Ⅳ)a 手法 融合的 総合 分析的(少し総合的)
D複雑な混合関係(英語)(Ⅱ)c(Ⅲ)c, d(Ⅳ)a 手法 融合的 総合 分析的
(ラテン語、ギリシア語)(Ⅱ)c, d(Ⅲ)c, d(Ⅳ)― 手法 融合的(象徴的) 総合 総合的
(ドイツ語)(Ⅱ)c(Ⅲ)c, d(Ⅳ)c 手法 融合的 総合 総合的
表1の縦の分類は、概念を言語記号に移すときに生じる問題である。一つは、語幹概念を純粋なまま保持しているかどうか、また一つは、基本的な関係概念に具体概念が混ざるかどうかにより、純粋関係言語(A:単純、B:複雑)と混合関係言語(C:単純、D:複雑)を区別している。
一方、横の分類で(Ⅱ)の派生概念は、語幹要素に非語幹要素を接辞し、語幹要素に特定の意義を添加する。例えば、farmerのerは行為者を表す接尾辞のため、farmerという語は特定の動詞の習慣的な主語になる。
(Ⅲ)の具体的関係概念も語幹要素に非語幹要素を接辞することで表現されるが、派生概念より隔たりが大きい(例、booksのsやdepthのth)。但し、他の類と混同があるため、避けられる。
(Ⅳ)の純粋関係概念は、命題中の具体的な要素を相互に関係づけて、明確な統語形式を与える(例、数、性、格の照応)。表1の横の区分は、言語に表現されている概念を分類するためにある。
これに融合度と総合度が加わる。融合度は、孤立、膠着、融合、象徴を特徴とする。例えば、日本語のような膠着型言語が並置の手法で接辞添加をするのに対して、ラテン語のような融合型言語は、定義上非膠着言語になる。
また、総合度は、分析的と総合的に分けられる。分析的言語とは、複数の概念を結合して単一語にすることがない言語(例、中国語)または節約しながらそうする言語である(例、英語、仏語)。また、ポリネシア語は語順が中国語よりも揺れていて、複雑な派生に向かう傾向がある。
総合的言語とは、概念が密で語がより豊富な内容を持っており、かつ具体的な意味の射程を適度な範囲に保とうとする言語である(例、ラテン語)。ラテン語とギリシア語は、基本的に屈折型の言語であり、融合的な手法を取る。この融合には、外的な音声的意味と内的な心理的意味がある。
日本語は、語幹概念を純粋なまま保持しながら、さらに不可分の要素(例、動詞や形容詞の活用形)を集める言語とする(Bタイプ)。命題を組み立てるときは、具体的な要素を相互に関係づける(例、数、格助詞)。(Ⅰ)から(Ⅳ)までの言語概念は、中国語と対応させている。
ドイツ語は、基本的な関係概念に具体概念を混ぜながら、不可分の要素(例、動詞、形容詞、名詞の活用形)を集める言語とする(Dタイプ)。命題を組み立てるときは、やはり具体的な要素を相互に関係づける(例、数、性、格の照応)。(Ⅰ)から(Ⅳ)までの言語概念は、英語と対応させている。
表1の中でa、b、c、dは、補助タイプである。それぞれ順に、孤立的、膠着的、融合的、象徴的になる。また数学的には、次のような公式が成り立つ。膠着c (goodness) = a + b、規則的融合(強) c (books) = a + (b – x) + x 、不規則的融合(弱) c (depth) =(a – x) + (b – y) + (x + y) 、象徴的融合c (geese) =(a – x)+ x。
花村嘉英(2015)「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品-魯迅をシナジーで読む」より