【要旨】
「狂人日記」(1918)から見えてくるカオス効果を題材にして「魯迅とカオス」というシナジーのメタファーを考察する。最初に認知言語学における一般的なメタファーの分析について考える。シナジーのメタファーは、その上位概念である。「狂人日記」が執筆された当時の中国は、内戦と列強国との戦いを繰り返す二重の戦争状態にあり、中国人民の振舞いは無秩序で不規則なものであった。
主人公の狂人は、被害妄想に罹っているため、当時の中国人民が決していわないような社会批判を繰り返す。狂人が受け取る入力は、一般の人の入力と少しずれていると考えてもおかしくない。
カオスの特徴は、文理を問わずどの分野でも非線形性と非決定論である。この2点を「狂人日記」から引き出すことができれば、作品を執筆している時の魯迅の脳の活動はカオスに通じることになる。作家の思いと人工知能が照合できれば、自ずと客観性が生まれる。
花村嘉英(2015)「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品-魯迅をシナジーで読む」より