「ブルジョワ世界の終わりに」から見たゴーディマの意欲についてー脳の前頭葉の活動を中心に2


2 人間の精神活動

 人間の精神的な活動とは、心の表出と言われる言語、記憶、感情、思考、意欲、判断、知能(適応能力)などのことである。これらの活動は、一般的に脳によって生み出されている。
 脳を部位ごとに見てみると、前頭葉の前頭前野皮質は、人の脳の活動でも特に、意志、計画、意欲、感情を管理し、前頭葉の上部では運動を、側頭葉の近くでは言語の発音を処理している。頭頂葉は判断や理解を管理し、前頭葉との境界に体性感覚が走っていて、触覚、痛覚などの皮膚の感覚、内臓の痛覚などを調節する。また、側頭葉との境界に味覚の機能がある。後頭葉は、視覚の情報を処理している。(片野2017:3)

大脳皮質の役割分担
区分 役割
区分 前頭葉・前頭連合野
役割 思考、意志、計画、意欲、感情、判断、自己抑制
区分 前頭葉・運動連合野
役割 運動の開始や手順を計画
区分 前頭葉・運動野
役割 運動連合野の指示に基づき、運動の指令を発信
区分 頭頂・体性感覚野
役割 触覚、痛覚、深部感覚などの受け取り
区分 頭頂連合野
役割 判断、理解、感覚情報の統合 
区分 側頭葉・聴覚野 聴覚情報の受け取り
役割 側頭連合野 知識、記憶、言語の理解
区分 視覚連合野 視覚情報の判断、認識
役割 視覚野 視覚情報の受け取り
区分 ブローカー野
役割 言語の表出:書く、話す
区分 ウェルニケ野
役割 言語の理解:読む、聴く

 当初から言語や記憶には関心があり、魯迅の「阿Q正伝」(1922)を題材にして側頭葉にある海馬について考察したことがある。(花村2015) 
 魯迅の文体は、従容不迫(落ち着き払って慌てないという意味)で、持ち場は短編である。「阿Q正伝」(1922)に対する解析を「記憶と馬虎」にし、これを「記憶とカオス」という生成イメージに近づけるため、場面を作業単位にしてL字の解析と生成を繰り返す。すると馬虎という無秩序状態にある人々の予測不可能な振舞い(非線形性)及び刑場に向かう阿Qと荷車運搬人の近似入力が全く異質の出力になる様子(初期値敏感性)が見えてくる。  
 記憶を司る部位として海馬は、側頭葉を覆う大脳皮質のすぐ裏側にあり、ニューロンの集まりでその断面にはS字に似た筋があり、そこに細胞が沢山詰まっている。(片野2017)によると、ニューロンのシステムでは、脳の全ての部位で一つ前のシナプスから受容体が神経伝達物質を受け取り、電気信号に形を変えて、先端のシナプスから次のニューロンへ信号が伝わる。もちろん、側頭葉には聴覚の機能もあるという。

花村嘉英(2018)「『ブルジョワ世界の終わりに』から見たゴーディマの意欲について」より


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