アーネスト・ヘミングウェイの”The old man and the sea”「老人と海」で執筆脳を考える2


2 Lのストーリー
 
 アーネスト・ヘミングウェイ(1899-1961)は、海を愛し生物を愛し偉大なる戦いを愛した作家である。彼の文体は、口語体の平易な英文であり20語前後の短文がandやbutでつながっていく。多様な形容詞は使わない。最後の作品「老人と海」は、傑作と評される。写実主義が持ち味で、そこにメンタルな要素が調和している。1952年「老人と海」を出版後、アフリカで二度の航空機事故に遭遇し、晩年はその後遺症により躁鬱による気分障害などの精神疾患があり、1961年7月散留弾で自殺した。
 「老人と海」の登場人物は、サンチャゴ老人とマノーリン少年、カジキ、サメ、トビウオ、ライオン、鳥といった魚や動物たちである。これらと対等にあるのは、空、雲、太陽、月、星といった宇宙の存在物である。海との戦いでは、海の生物の強さと美しさに圧倒されつつも、1500ポンドの重量があり長さが18フィートにも達する大魚(he was eighteen feet from nose to tail.)と戦ううちに親近感を覚え、自分を取り巻く存在物が友になる。 
 84日間魚が釣れず(he had gone eight-four days now without taking a fish.)、それでも諦めることなく大魚を一人で追いかける老人は、ヘミングウェイ分身ともいわれ、人間のあり方を教えてくれる。一人で舟に乗り沖に出て三日間に及ぶ大魚との戦いの後、まかじきの心臓から流れ出た大量の血が深海に潜むサメに察知される。帰港中二度も襲撃に見舞われる。最初はDentuso、二度目はGalanosである。デンツーソは、頭に銛を打ち込み退けたが、ガラーノは、銛もナイフも失くしたため、オールや棍棒のみで戦った。(I have the two oars and the tiller and the short club.)まかじきとの戦いに愛はある。しかし、サメとの戦いにはない。
 そして、老人は、骨だけになった大魚を持ち帰る。仕留めた獲物を無傷で持ち帰れなかったため負けてしまったというが、老人の仕事は漁村のメンバーに再評価され、少年に付き添われて満足して眠る。(he was still sleeping on his face and the boy was sitting by him watching him.)目的は達成された。
そこで購読脳は「海と戦う老人と海という好敵手」、執筆脳は「客観描写と調和」、シナジーのメタファーは「ヘミングウェイとストイシズム」にする。

花村嘉英(2022)「アーネスト・ヘミングウェイの”The old man and the sea”「老人と海」で執筆脳を考える」より


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