アブドゥル・グルナの“Memory of departure”(出発の記憶)で執筆脳を考える2


2 Lのストーリー

 「出発の記憶」(1987)の主人公ハッサン・オマルは、貧窮で苦しめられても勉強するという希望を捨てず裕福な叔父アーメドを頼りにタンザニアからナイロビへ出発する。ナイロビでは過去と未来が衝突し、恐怖やフラストレーション、優美と残虐が交じり合う。
 グルナ自身1948年にタンザニアのザンジバルで生まれた。裕福な家庭に育つも反政府クーデターにより亡命を余儀なくされ、英国に渡ることを決意する。海外の大学で学ぶための奨学金は出ない。挫折と絶望のため心が折れそうになるが、将来への希望は捨てきれない。グルナの作品は、東アフリカを舞台にした植民地主義の影響と難民が負う心の傷が描かれている。
 ポストコロニアルをここでは文明化と考える。小説の中では、海辺の町出身者は、洗練された教養のある人たちである。(P.117)ナイロビにいる叔父アーメドは、父が死んだときに店や仕事を売りすべてを管理している。そこで、私が金を必要とするならば、自分のところに来るようにと伝えた。(P.52)パスポートの申請のために出入国管理局に行った。(P.66)発行には3週間必要だった。フラストレーション。母がナイロビについて話してくれる。道にはスリや盗賊がいる。寒い日の衣類、叔父アーメドに会う方法など。(P.70)
 列車は、二等車両。駅まで父が見送りにくる。何もなしでは帰ってくるな。学位に拘れと父が激励する。ナイロビまでの旅が始まる。客室にはモーゼス・ムイニという青年がいた。(P.78)ナイロビでアフリカの芸術、文学、文化、歴史を学んでいる。(P.85)しかし、物を盗むのも悪気がなく無意識のまま行われる。個人の意識が介在しない潜在記憶である。列車は、数時間でナイロビに到着する。(P.88)ナイロビに着いたらタクシーで叔父のところへ行く。

花村嘉英(2023)「アブドゥル・グルナの“Memory of departure”(出発の記憶)で執筆脳を考える」より


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