トーマス・マンとファジィ10


 要素自体がファジィの場合を考えてみよう。例えば、10ではなく、だ いたい10または10 ±10%などの扱い方が問題になる。すべての測定値は、 通常、絶対的な量や値ではなく、多かれ少なかれ許容範囲を伴う大きさである。つまり、測定器または測量器が示す値は、無条件で受け入れら れるべきではなく、常に測定器などの公差を伴うものとする。こうしたことは、測定技術において自明なことである。上記の数字は、インター バルとして考察され、数字自体(例えば、測定値)は、その中央に存在 し、その幅は、公差によって規定される。例えば、体温計が、36℃の体温を示しているとする。その公差を±1%とすると、メンバーシップ関 数による表記は、三角形になる。
 測定値(36℃)とインターバルの制限を確認する。精度の低い測定器は、公差が大きく、大きなインターバルになる。一方、精度が高い測定器は、限りなく公差が小さく唯一の明白な値となる。また、垂直の線は、公差による値が問題となることを示している。
 では、曖昧な数字のメンバーシップ値は、どのように算出できるのであろうか。最善の方法は、双方のメンバーシップ関数の交点において最大値を選択することであろう。例えば、体温計による測定値 36.0℃ ±0.4℃と健康の目安といえる曲線の流れが与えられる。それらを重ねると、その結果としてが出てくる。ファジィ集合「病気」に対する36.0°C 士 0.4℃のメンバーシップ値は、0.3から0.6 の範囲だが、最大値を使用することが実践的である。さらに、 多くのファジィ集合が問題になる場合もある。平温には個人差があり、低い人もいれば、高い人もいる。但し、ここで紹介した方法とは異なるものが、よりうまくこうした問題を解決できるならば、無論それをやさしい曖昧な数学に取り入れることに異論はないであろう。

花村嘉英(2005)「計算文学入門-Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」より


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