島崎藤村の「千曲川のスケッチ」の執筆脳について-自然や文化の観察者の立場から9


 批判的思考の適用は、自分の持つ批判的な思考のスキルから最適なものを選択し遂行するというプロセスにより成立する。使用判断は、批判的思考をその状況で行うか否か判断し、表出判断は、行った批判的思考をその場面で表出するか否かを考える。
 一方に熱心な歓迎から同じような受入をする傾向は、ある時、地方的な単調という一種の重苦しさになってしまう。藤村の直観である。気質を異にする人でも同じような話をするし、また、理屈っぽい人もいる。人の心が激しいからであり、青年会の準備をするために激しい議論もあった。
 「山に住む人々」の場面で、(2)のモデルを考える。使用判断を実行し、批判的思考の適用では、都会を経験した藤村が第三者的に信州人の気質を写生し、人物の価値や能力を評価、検討しているため、表出判断では、この場面で表出するとなる。
 信号の流れは、購読と同様に、共生の読みでも何かの分析→直感→専門家である。藤村に関し、五感分析→思弁→エキスパートという流れで「共感と批判」という共生の読みを考える。「千曲川のスケッチ」では自然や文化の認識が重要な情報となるため、シナジーのメタファーは、「島崎藤村と観察に基づく思考」にする。

花村嘉英(2020)「島崎藤村の『千曲川のスケッチ』の執筆脳について-自然や文化の観察者の立場から」より

シナジーのメタファー4


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