(17)動詞の省略された表現が先行する文の様相よりも強い同一グループの様相に支配された場合、意味上、矛盾が生じる。*
(15)a-cと(16)a-cの場合は、様相の強弱の度合いが同レベルかもしくは強弱の関係にある。しかし、(15)dと(16)dは、強弱の関係にあり、意味上矛盾することになる。
3で説明したモンタギュー文法の規則類に従って、(15)dと(16)dの偽を説明するならば、次のようになる。まず、それぞれが翻訳規則によりIL式の形になる。(15)d→können‘(∧spazierengehen‘)(Paul‘)& auch‘(∧müssen‘)(Maria‘)。(16)d→dürfen‘(∧antworten‘)(Paul‘)& auch‘(∧müssen‘)(Maria‘)。
花村嘉英(2022)「モンタギュー文法の意味公準について考える-階層的な様相表現を中心にして」より