JabavuとJerryは、窃盗をしては酒を飲みカードで遊ぶ。しかし、Jerryは、Jabavuを憎んでいる。BettyがJabavuに気持ちを寄せていることもある。Jabavuは、窃盗団へのJerryの誘いを断った。Bettyが殺された。JabavuとJerry が疑われる。互いにやっていないという。酒場で飲んでいた人たちが怪しい。Jabavu のコートに血がついている。ナイフの切跡もある。アフリカでは人を殺しても捕まらない。(P.314)
Jabavuは、助けてもらった恩のあるMizi氏の家に忍び込み金品を盗もうとする。(Hunger P.316)裏切りだ。警察がやって来てJabavuに手錠を掛けて刑務所に連行する。煉瓦の壁で石の床でできた独房に入れられても、取調べで無言を通す。一週間が過ぎた。八日目に英国出身の白人の牧師Tennent氏がやって来た。(P.325)背の高い痩せた男で信仰の自由を認めている。汚い椅子に腰かけて、Jabavu に話しかける。とても不幸なようだけど、助けてあげよう。
窃盗団に入ったのは、間違っている。しかし、初めての犯行だったことは悪くはない。でも法を犯した罪は償うことになる。禁固1年だろう。Mizi氏からの手紙を渡すと、Jabavuの頬から涙が零れる。真実を言うように書かれていた。自身も証人として出向くからである。アフリカの刑務所にいる人たちのことを自由と正義のために考えろ、一人ではない。私たちWeという語が使われている。
Iを使っていた時代には、ナイフのような厳しく醜い時代があった。Weのおかげで獣が激怒する飢えが初めて拒絶されることなく、優しくWeの中に流れていく。Jabavu は手紙を読むと、Tennent氏に戻し、言うことをきくという。繰り返しWeと言うと、彼の空っぽの手の中に兄弟たちの温かい手があるように見えた。(P.331)
レッシングは、この小説の中に1970年前後の南部アフリカで発生していた社会問題を描いている。空腹、金、窃盗、殺人、警察、牢獄、裁判は、日常茶飯事であった。そこで、“Hunger”の購読脳を「犯罪と成長」にし、飢えをもたらすアパルトヘイトという人種差別を問題視しているため、執筆脳は「抵抗と表明」にする。“Hunger”のシナジーのメタファーは、「レッシングと表明」である。
花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より