B 予算の仕組み
国の予算には、①一般会計予算、②特別会計予算、③政府関係機関予算の三種類がある。
① 一般会計予算は、国の予算の中で最も基本的なものであり、租税や国債などの歳入を社会保障費、公共事業費、防衛費、経済協力費などの歳出を賄う姿を現している。
② 財政法では、国が特定の事業を経営する場合と、特定の資金を運用する場合と、その他特定の歳入で特定の歳出に充て、一般会計と区別し、経理・処理する必要がある場合に限定して、特別会計を設定できるようにしている。これが特別会計予算である。
③ 政府関係機関予算とは、6公庫(国民生活金融公庫、住宅金融公庫など)、2銀行(日本政策投資銀行、国際協力銀行)の予算のことである。これらの期間は政府が出資している特殊法人であり、その予算は国会の議決が得られなければならない。
C 歴史上赤字国債増加の原因
国債の発行は、1965年に始まったが、発行額の急増は、1973年の第一次石油ショック以降であった。1978年度には、10兆7900億円と、新規発行額が初めて10兆円の大台に乗った。1979年には、国債の発行総額が15兆2700億円であって、そのうち赤字国債は8兆550億円と、全体の5割りも超えた。
1980年代は、日本の財政再建の時代である。これは、財政赤字を縮小する過程でもある。1982年度の予算編成でのゼロ・シーリングの設定、1983年度からのマイナス・シーリングの設定と本格的な再建策が取られた。
1990年代に入ってバブル経済が崩壊すると、財政事情は急速に悪化し、大きな景気対策として、1994年度から赤字国債の発行が再開され、橋本内閣での財政再建策の挫折、小泉内閣での財政改革につながっていく。
D 財政構造改革の背景
2001年春に発足した小泉内閣は、日本の経済システムの体質を変えるために、構造改革を断行した。改革の一つは、やはり年金などの社会保障制度を含める財政改革である。改革の背景から見てみよう。
第一の背景は、財政赤字の膨らみである。1990年代から長期的な不況により、税収の割合が低下する一方で、一般会計の赤字を補填するための国債の発行額が年々増えている。バブル崩壊後の景気対策や1999年度の所得税・法人税の減税などの税制改革と関わる構造要因が、一般政府勘定の赤字の大部分である。また、高齢化の進展による社会保障費の構造的要因が大きく圧し掛かってきている。
第二の背景は、社会保障費の増加である。少子高齢化の進展は、医療や年金などの社会保障費の増加を招いている。高齢者が暮らしやすい環境を考えれば、国の負担も大きくなっていく。例えば、社会保障給付費とか社会保障関係費の割合も増加の傾向にあり、2005年度には、歳出のうち社会保障関係費の割合が43.1%を占めるようになった。
第三の背景は、国民負担率の上昇である。国民負担率とは、企業を含め国民全体でのしゃ相保険料や税金をどの程度負担しているかを、国民所得との対比で見たものである。1975年度は25.7%であったが、1985年度は34.4%、2007年度は39.7%にまで上昇した。国民負担率が高くなれば、国民の経済活動の自由度が低下し、勤労意欲を阻害する恐れがあり、経済活動の空洞化が進む可能性もある。
花村嘉英(2017)「日本経済入門の講義」より