日本経済入門の講義2


2 社会保障問題

2.1 日本の社会保障問題

A 狭義の社会保障について
 社会保障は、国民生活と深く関わっていて、制度別に、①社会保険、②公的扶助、③社会福祉、④公衆衛生と医療、⑤老人保健の5つに分類される。
① 社会保険とは、法律に基づき、加入が強制されている。種類としては、医療、年金、労災、雇用、介護がある。医療と介護保険は、医療サービスや高齢者の介護サービスの費用を保障するものであり、年金と雇用保険は、老齢、障害、遺族、失業などについて、所得を保障するものである。労災保険は、仕事上また通勤途上の病気やケガ、障害、死亡についての医療費の補償や所得の補償をするものである。
② 公的扶助とは、生活困窮者に対し、最低限度の生活を保障するため、国家が一般租税を財源として最低生活費に足りない部分の金品を支給する所得保障制度である。
③ 社会福祉の制度とは、障害者や要介護の高齢者など社会的な援護を必要とするものが自立した生活を送ることができるよう、生活面での様々な支援を行うための制度である。
④ 公衆衛生及び医療とは、病気を防止し、健康を増進するための地域社会の組織的支援の体系である。病気予防や保健指導、上下水道やごみ処理などで国民健康の維持と向上を図るものである。
⑤ 老人保健とは、高齢者の健康の維持と適切な医療の確保を図るための制度である。特に、40歳以上の住民を対象に市町村に健康診査などの保険事業を実施するとともに、各医療保険制度に加入している高齢者を対象に行われる医療からなる。
注 2015年冬学期に、中国の寧波市にある寧波大紅鷹学院において、日本語専攻の4年生を対象に日本経済入門のクラスを担当した。その時に使用した教材は、楊立国編(2011)の「日本経済入門」である。

花村嘉英(2017)「日本経済入門の講義」より


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