1 はじめに
日本語教育の中でも技術文への関心が高まっている。この論文では、難しいテクニカルライティングではなく、人文の人が取り組むべき基礎的な内容を考察していく。
産業翻訳の対象は、ほとんどが技術文である。電気製品のマニュアルであれば、工場からの出荷に間に合うようにマニュアル作成に納期が設定されていて、作業にスピードが求められる。そのため限られた時間で大量のデータを訳さなければならない。また、技術文は構文にも表現にも独特の言い回しがあるため、翻訳ソフトに保存されている作業メモリーを参照しながら翻訳データを作成していく。自分流の美しい翻訳は不要である。
もともと技術系の翻訳者は分野の知識があるため、比較的スムーズに作業を進めることができる。通常技術者は、マシン語や技術英語を使用したテクニカルコミュニケーションでやり取りをする。一方、人文系の翻訳者は、文献に基づいたコミュニケーションを使用する。文系と理系でコミュニケーション論が異なるため、文から理へ調整する際に何らかの工夫が必要になる。この論文では、英日と独日の技術文を10年余り手掛けてきた実務経験を基にして、私なりの工夫を説明していく。
【先行研究】
現在、マクロの文学研究に取り組んでいる。例えば、森鴎外、魯迅、トーマス・マンのデータベースを作成しながら、言語分析と情報分析を並行して手がけている。これが先行研究の取り組みであり、詳細については日々の調節が必要である。翻訳については、作業単位が「言語と分野の専門知識」であるため、文芸、コンピュータ、特許、メディカルの分野で実績を作り、言語は英語、ドイツ語、中国語、日本語で調節している。
【本論の位置づけ】
人文からミクロとマクロを調節するための一つの試みである。以下では、日英、独日、中日の順に技術文が出てくる。人文の研究者も言語や文学の研究のみならず、比較と共生からなるLの分析ができるようにシナジーの研究に取り組むとよい。技術日本語が入力でそこから英文を考え、それを他言語に展開し、さらにそこから和訳を試みる。日本語技術文の学習法とその応用例は以下の通りである。
【技術文の研究の流れ】
①技術日本語→②技術英語→③技術ドイツ語または技術中国語→⑤技術日本語
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より