次の文は、自動車やオートバイなどに使用されているディスクブレーキに関する明細書の一部分である。複雑な文章の構造や専門用語を素早く理解した上で、特許文の文体に合わせて翻訳をつけていく。
【独文】
(7)Die Erfindung bezieht sich auf eine mechanische Betätigungsvorrichtung für eine Teilbelagscheibenbremse, bei der durch Verschwenken eines Betätigungsbehegels in einer zur Bremsscheibe parallelen Ebene die beiderseits der Bremsscheibe angeordneten Bremsbacken gegensinnig bewegt und dadurch gegen Umwandlung der Schwenkbewegung des Betätigungsbehegels in eine zu seiner Schwenkebene senkrecht stehende Bewegungsrichtung zum Andrücken der Bremsbacken zwei nacheinander wirksame Übersetzungsstufen vorgesehen sind, von denen, gleich Schwenkbereich des Hebels vorausgesetzt, die erste Stufe einen größeren und die zweite Stufe einen kleineren Bremsbackenweg liefert.(ドイツ連邦共和国特許庁 公開資料1264176)
①用語
特許文に慣れるまで専門の辞典を何度も繰り返して調べるとよい。ここでは、Betätigungsvorrichtung(作動装置)、Betätigungsbehegel(作動レバー)、Bremsscheibe(ブレーキディスク)、Bremsbacken(ブレーキシュー)、dadurch(全文を受けて、それによりとする)、gegen Umwandlung(逆らって向きを変え)、zu seiner Schwenkebene senkrecht stehende Bewegungsrichtung(旋回レベルと垂直となる方向)、vorsehen(装備する)、vorausgesetzt(~を前提にして)、Bremsbackenweg(ブレーキシューの経路)を挙げておく。
②構文
この文は、Teilbelagscheibenbremse(部分コーディングのディスクブレーキ)を先行詞とする関係代名詞bei derが二つの従属文を従えていて、そのうち後者はÜbersetzungsstufen(ギア装置)を先行詞とする関係代名詞von denenが後続の説明をしている。これは途中にピリオドのない特許文特有の長い一文になっている。
③英語に準ずる考察 表11
2段階の処理法 例えば、bei der以下の関係文の主部の「die beiderseits der Bremsscheibe angeordneten Bremsbacken」は「ブレーキシューがブレーキディスクの両側に配置されると」にし、述部は「逆方向への動きが生じ」にする。
態の用法 同じ関係文の述部にbewegt (ist) やvorgesehen istが使われている。他動詞の過去分詞とseinの人称変化との組み合せは、状態の受動を表している。
否定構文 なし
時制 現在形
全体の訳は次のようになる。
【和訳】
(8)本発明は、ブレーキディスクと平行レベルで作動レバーを回すことにより、ブレーキディスクの両側に配置されたブレーキシューが逆方向に働き、それにより、作動レバーの旋回が旋回レベルと垂直になるブレーキシュー加圧の方向へ変更することに逆らって、並列に作用する二段式ギア装置が装備された部分コーティングのディスクブレーキ用のメカニカルな作動装置に関する。レバーの回転範囲が同じことを前提に、二段式ギア装置のうち一段目はこれまでよりも大きなブレーキシューの経路を、そして二段目はこれまでよりも小さなブレーキシューの経路を提供する。
花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より