作家の執筆脳を探るシナジーのメタファーの研究は、①Lのストーリーや②データベースの作成、さらに③論理計算や④統計処理が必要になる。しかし、最初のうちは、ある作品について全てを揃えることが難しいため、4つのうちとりあえず3つ(①、②、③または①、②、④)を条件にして、作家の執筆脳の研究をまとめるとよい。以下に、シナジーのメタファーのメリットをまとめておく。
【メリット】
・作家の執筆脳を分析して組み合わせを作る際、定番の読みを再考する機会が得られる。
・定番の読みは、外国語の場合、客観的に読めているかどうかを確認するのに便利である。
・データベースの作成は、作品の重読と見なせるため、外国語の習得にも応用できる。理解できる言葉であれば、何語でもよい。
・データベースの作成が文献学だけでは見えないものを提供するため、客観性も上がり、研究者個人の発見に繋がる。
・その際、フロントのカラムだけではなく、セカンドのカラムも考えると分析が濃くなる。
・また、形態解析ソフトなど新たにインストールすることなく、マイクロソフトのWordやExcelで手軽に取り組むことができる。
・論理計算を習得すると、言語文学に関する認知科学の知識が増える。
・データ分析により平易な統計処理ができるようになる。
・作家違いでデータベース間のリンクが張れると、ネットワークによる相互依存関係も期待できる。
・バランスを取るために二個二個のルールが適用されれば、社会学の視点からマクロの研究に関するアイデアを育てることができる。
・人間の世界を理解するには、喩えだけでは物足りず、作家を一種の危機管理者または観察者と見なして、相互依存に基づいた人間の条件を理解することができる。
・作家の執筆脳は、世界中であまり研究対象になっていないため、研究に取り組めば、難易度の高い研究実績として評価が得られる。特に、自分自身の認知の柱を作成できるところがシナジーのメタファーの研究の面白いところである。
・ブログやホームページを公開する際、複数の言語を使用しながら、世界レベルの研究実績として紹介できる。
例えば、シナジーのメタファーを外国語の習得に応用する際、エクセルファイルのカラムAに原文を順次入力していく。入力が終わったら、各行の原文を読みながら一行ずつ購読脳と執筆脳のカラムに数字を入れていく。これがリレーショナルとなり、単なる受容の読みとは異なるLの読みを提供するため、シナジーのメタファーを重読の一つに数えることができる。
また、非言語情報のジェスチャーに、例えば、顔の部位の表情を加えると、脳の電気信号の流れをつかむための判断材料になり、セカンドのカラムも意義あるものとなる。
今後は、作家の数を増やすことが課題になる。その際、バランスを意識して、東西南北とかオリンピックをイメージする。また、一作家の異なる小説間のリンクのみならず、作家違いでもデータベース間でリンクが張れると、予期せぬものが見えてくるため、シナジーのメタファーは分析力が上がっていく。文学をマクロに研究するには、やはり地球規模とフォーマットのシフトが必要十分な条件となる。
花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーの作り方について」より