シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅「狂人日記」7


2.2 標準偏差による分析
 
 グループA、グループB、グループC、グループDそれぞれの標準偏差を計算する。その際、場面1、場面2、場面3の特性1と特性2のそれぞれの値は、質量ではなく指標であるため、特性の個数を数えて算術平均を出し、それぞれの値から算術平均を引き、その2乗の和集合の平均を求め、これを平方に開いていく。
求められた各グループの標準偏差の数字は、何を表しているのだろうか。数字の意味が説明できれば、分析は、一応の成果が得られたことになる。 

◆グループA 五感(1視覚と2その他)
場面1(特性1、4個と特性2、1個)の標準偏差は、0.4となる。
場面2(特性1、2個と特性2、3個)の標準偏差は、0.49となる。
場面3(特性1、0個と特性2、5個)の標準偏差は、0となる。
【数字からわかること】2
作品の中で重要な視覚情報は前半に多く、後半に進むと他の五感情報と併用されている。

◆グループB ジェスチャー(1直示と2隠喩)
場面1(特性1、4個と特性2、1個)の標準偏差は、0.4となる。
場面2(特性1、2個と特性2、3個)の標準偏差は、0.49となる。
場面3(特性1、1個と特性1、4個)の標準偏差は、0.4となる。
【数字からわかること】
「狂人日記」は、当時の世相を反映させた作品のため、場面1、場面2、場面3を通して、前半直示で後半隠喩というパターンであることがわかる。

◆グループC 情報の認知プロセス(1旧情報と2新情報)
場面1(特性1、4個と特性2、1個)の標準偏差は、0.4となる。
場面2(特性1、2個と特性2、3個)の標準偏差は、0.49となる。
場面3(特性1、1個と特性2、4個)の標準偏差は、0.4となる。
【数字からわかること】
場面1、場面2、場面3を通して、前半は旧情報が多く、後半は新情報が多いため、ストーリーがテンポよく展開していることがわかる。

◆グループD 情報の認知プロセス(1問題解決と2未解決)
場面1(特性1、4個と特性2、1個)の標準偏差は、0.4となる。
場面2(特性1、2個と特性2、3個)の標準偏差は、0.49となる。
場面3(特性1、4個と特性2、1個)の標準偏差は、0.4となる。
【数字からわかること】
「狂人日記」は、場面1、場面2、場面3を通して、問題解決が予想したよりも多いことがわかる。

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-魯迅『狂人日記』」より


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