三浦綾子の「道ありき」でファイ係数を考える2


2 三浦綾子の「道ありき」でクロス集計表を分析する

表3

N病院に入院して四カ月がたったが、依然としてわたしの熱はつづき、身体はやせていた。しかし、その熱の原因を知ることはできなかった。排尿の回数が多くなり、時には夜七、八回おきることがあった。医師に言うと、驚いたことに、尿のでない薬をくれるというのである。虚無あり結核1 虚無なし結核1

わたしは、医学にはしろうとである。しかし、尿の回数が多いと言えば、少なくとも検尿ぐらいはするだろうと思った。それがいきなり尿のでなくなる薬と聞いて、この病院にいてもラチがあかないと考えた。
虚無あり結核1 虚無なし結核2

熱がでると解熱剤、下痢をすると下痢止め、咳が出れば咳止め、というのは一番信頼できない医師のすることではないだろうか。何よりもその原因を調べた上で、適当な処置がなされなければならないはずだった。わたしが退院を考えたのは、このことだけではなかった。虚無あり結核2 虚無なし結核2

その頃、私の背中がちょっとでも動かすと辺に痛むのだ。院内の外科医に見てもらうと、「神経だ。若い娘のことは、よく背中が痛むことがある。いちいち気にとめる必要はない」と言った。しかし、動かすと痛いのだから、もしかしたらカリエスではないかと尋ねてみた。虚無あり結核1 虚無なし結核1

医師は怒った。「レントゲン写真にも変化がない。神経だ」再び叱られて、いたし方なくわたしは病室に帰ってきた。わたしは、療養生活七年目であった。もう、客観的に自分の病状をとらえることができるはずである。誰でも最初のうちは、病気のことがよくわからないから、いらぬ神経を使うが、少なくとも六年の経験というものは、それほど神経質にはさせないはずである。医師が何を言おうと、わたしは病状からしてカリエスだろうと見当をつけた。虚無あり結核1 虚無なし結核1

連関を見るため、表3の数字を加算する。

花村嘉英(2021)「三浦綾子の『道ありき』でファイ係数を考える」より


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