『読む・書く』 中国人の学生に日本語の読み書きを教授する7


6 今後の課題

 上述したように、要約の練習は、一時記憶として注目を集めているワーキングメモリーの強化やビジネスの実践につながることから、作文の課題に入れるとよい。要約ができるようになると読書のスピードが速くなるため、自ずと読書の量が増えて集中力も身についていく。現実的に「読み書き」のトレーニングをしていくと、感覚脳の右脳と言語脳の左脳を結ぶ脳梁と呼ばれる神経線維が強くなり、両方の脳のバランスがよくなっていく。
 また、ライティングの幅を広げるために、日本語の技術文への対応を検討するとよい。縦型人間ではなく、文理融合が調節できるような人材を育成することも教育の現場で心掛けていく必要がある。しかし、技術文の翻訳といっても、翻訳の作業単位は語学力と分野の背景が組となるため、理系のとある分野の入門から少しずつ勉強するとよい。単純に文系で比較というと、AとBからA’とB’を出す作業のことである。一方、文理融合、共生とは、AとBから異質のCを出す作業のことである。異質のCに橋が架かるとマクロ的な調節となり、シナジーらしくなっていく。

花村嘉英著(2017)「日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで」より


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