『日本語教育を通してシナジー論を考える』 人文科学のための人材育成について3


2 原因は何か

 人文科学の伝統の技は、語学文学とか文化思想などである。また、ことばごとに分かれていて、専攻科目もたくさんある。人文の関係者が平時に取り組む教授法は、誰にとっても共通の実務である。教授法の周りに自分の専門分野があり、副専攻として専門以外にも通じたことばがある。しかし、実績を見るといずれも人文科学のもので、横に目安はない。では、どうすれば横に目安を置いて、評価を出すことができるのだろうか。
 ひとつは、人文の人も横に実務を作るとよい。例えば、夏休みなど時間があるときに、産業翻訳に取り組むのも悪くはない。人文科学が専門の人でも機械翻訳に興味がある人もいるだろう。英語の場合、関係者も資料も多いことから、大学人でも産業翻訳に貢献している人がいる。日本語教育学会にもビジネス日本語の分科会がある。そういうところで翻訳作業をしていて気づいた問題を解決するための工夫などを自分なりにまとめて発表するとよい。そうすれば、とりあえず実務を通してL字を作ることはできる。
 英語以外の外国語が担当の人たちもそれぞれのことばの技術文を和訳してみるとよい。理系のエンジニアは、技術的なやり取りのためのツールとしてプログラミング言語を使用する。また、自然言語は英語を使用すればよい。しかし、中には英語以外のことばにも通じている人たちがいて、そういう理系の人が英語以外の技術文を翻訳している。
 英語以外が持ち場の人文科学の人たちも理系の人たちに分野の知識を教わりながら技術文の翻訳作業をすればよい。そうすれば、人文と理系でことばの問題もあるが、分野を調節するために何が必要なのかを考えることになる。こうすると翻訳の表現がうまくなるとか仕事がはかどるといった誰もが思うことでよい。例えば、翻訳ソフトを使用することも作戦である。民間人との情報交換もけっこう役に立つ。

花村嘉英著(2017)「日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで」より


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