2.2 被害妄想は統合失調症
被害妄想は、感情と思考がうまく調和しない統合失調症の一つの症状である。統合失調症の原因については、神経細胞の移動を促すケモカイン不足により引き起こされるという説が有力である。以下に、統合失調症の症状をまとめてみる。
症状 妄想気分
これまでとは何かが違うような、世の中が変わったような、不安と気持の昂りが混ざった気分のことである。被害妄想にかかると、些細なことでも自分を貶めるための仕業と思い込んでしまう。
症状 注意障害
統合失調症が発症する前段階で見られる。他の雑音には目もくれず、特定の刺激だけに焦点を絞る選択的注意と注意するが故に注意散漫となる持続的注意とがある。
症状 幻聴
最も多いのは、批判や悪口が聞こえてくるという症状である。幻聴が見られると、独り言や空笑が起こりやすく、幻聴に向かって怒鳴ったりすることもある。こうした幻覚症状は、被害妄想とセットになっている場合が多い。
症状 自分と他者との境界が崩れて、自我境界が曖昧になり、自分の秘密が筒抜けで、自分の考えが周囲に広まっていると感じてしまう。
症状 思考障害
言動のまとまりが悪くなり、思考の統合が緩くなる症状。話がとぎれとぎれで飛んでしまい、会話が支離滅裂になり、論理的な筋道に従って話すことができなくなる。
昔から統合失調症には分裂気質(シゾイド)の人がかかりやすいといわれている。シゾイドとは、非社交的で、内向的で、孤独を好み、思索的で浮世離れした性格を指している。また、近年の研究からは、受動型の人がかかりやすいことも分かってきた。幼児体験でいうと、いじめを受けた人は攻撃されても反撃しないことから、受身的な行動様式をとる性格といえる。
統合失調症の症状は、通常、陽性と陰性に分けられる。前者は、幻覚や独り言や妄想、興奮といった中枢神経系の病的な活動が原因で発症し、後者は、活動意欲の低下や自閉症のように中枢神経の活動や機能が低下して起こる無気力状態のことである。自分の秘密が筒抜けと感じる自我漏洩症状や自分の考えが周囲に広まっていると感じる思考伝播などの自我障害を幻覚妄想症状に含めて考えることもある。
これらのほかに認知機能の障害も認められている。統合失調症の患者は、関係のないことを気にする傾向があり、大切なものに注意を向けることができない注意障害を引き起こす。精神科医たちは、陽性や陰性の症状が始まる前に、短期記憶や注意力といった認知機能の低下に注目する。
統合失調症の患者は、情報を処理する際に、ストレスを感じて負荷がかかりやすい。通常、感覚器官から入ってきた情報は、脳の視床で篩にかけられる。しかし、情報量が増えて、処理能力を上回りそうになると、情報量を減らすために視床フィルターが機能する仕組みになっている。統合失調症の患者は、これがうまくできまない。思考や行動がまとまりを失う解体症状を引き起こすためである。
花村嘉英(2015)「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品-魯迅をシナジーで読む」より