日本語から見た東アジアと欧米諸語の比較-言語類型論における普遍性を中心に8


3 日本語の文法関係の表示

3.1 対格型言語と従属部表示

 自動詞文と他動詞文の主語が同格で、同時に他動詞の目的語の格が異なる場合、その言語は対格型言語と呼ばれる。(ウィキペディア 言語類型論)

(4)一郎が勝つ。
(5)一郎が打球を追う。

 自動詞文にも他動詞文にも主語に「が」格が使われているため、日本語は対格型言語に属する。主要部と従属部の関係は、修飾と被修飾及び動詞と項の関係から見ることができる。日本語は文のレベルで見ると語順が自由であるが、下位にある語句について考えてみると、そこには一定の法則がある。つまり、形容詞と名詞からなる名詞句の場合、文法的にも意味的にもAがBに従属し、Aは必ずBに先行する。(表1参照)

(6)カメラの前で一郎は花子に黄色いリボンを付けさせた。

 ここで注目する語句は「黄色いリボン」である。この場合の「黄色い」の活用は連体形であり、「リボン」に形態的に従属し、さらに「黄色いリボン」は「リボン」の一種であって、「リボン」を具体的に説明している。つまり、日本語の名詞句は従属部により表示されている。
 動詞と項の関係について見ると、項は名詞につく格助詞で示されるため、ここでも語句のレベルは従属部による表示と見なされる。

(7)明日の運動会には弁当を持参する。

 動詞句「弁当を持参する」の格助詞「を」が表示マーカーになり、「弁当を」という対格の項による従属部表示が見て取れる。

花村嘉英(2018)「日本語から見た東アジアと欧米諸語の比較-言語類型論における普遍性を中心に」より

シナジーのメタファー3


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