日本語から見た東アジアと欧米諸語の比較-言語類型論における普遍性を中心に4


(2a)彼女にすぐ電話をかければよかった。(花村 2017)
(2b)彼女に電話をすぐかければよかった。
(2c)電話をすぐ彼女にかければよかった。
(2d)電話を彼女にすぐかければよかった。
(2e)すぐ電話を彼女にかければよかった。
(2f)すぐ彼女に電話をかければよかった。

 また、(2a)から(2 f)は、日本語の語順が自由であることを述べている。但し、単文レベルで語順が自由といっても、文脈の中に入れば、テーマ・レーマや代名詞による調節から語順が決まる。

表2
言語 形態 語順の自由度 活用ありなし 活用の意味合い
中国語 孤立 固定なし 活用なし 語順で語と語の関係がわかる。
日本語 膠着語 高い あり 後続のことばに対応。
韓国語 膠着語 高い  あり 後続のことばに対応。
ドイツ語 屈折語 高い あり 人称の変化に対応。格の問題あり。
フランス語 屈折語 低い あり 人称の変化に対応。格の問題あり。
英語 屈折語 固定 あり 人称の変化に対応。格の問題あり。
ラテン語 屈折語 最高い あり 人称の変化に対応。格の問題あり。

 ゲルマン諸語は、従属文で動詞が後置されて枠構造を作るために、ドイツ語は、通時的に日本語と同じ語順のSOVと見なされていた。

(3a)Er geht sofort hinaus.
(3b)Seine Mutter sagt, daß er sofort hinausgeht.

 しかし、現代ドイツ語では、SVOを基本としている。従属節は、有標の従属接続詞(daß)を用いるため、主節に特殊な形態は現われない。そのため、通時的な古い語順は従属節に残るが、次第に基本語順SVOに推移したとされる。また、フランス語に比べて、ドイツ語は、修飾語が名詞の前に来るため、語順の自由度も高くなる。(ウェイリー 2006)

花村嘉英(2018)「日本語から見た東アジアと欧米諸語の比較-言語類型論における普遍性を中心に」より

シナジーのメタファー3


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