「ブルジョワ世界の終わりに」から見たゴーディマの意欲についてー脳の前頭葉の活動を中心に3


 感情には、本能のことをいう情動と人間特有の感情といえる畏敬があり、時間的な見方をすると、情動は瞬間的な思いであり、畏敬は継続的な思いになる。また、感情には、喜怒哀楽のようにどちらにも入るものがある。情動の起因には、内的要因(創発)と外的要因(誘発)による反応があげられる。(花村2017)では、鴎外の歴史小説にも内的要因と外的要因による思考があり、誘発が主の作品として「山椒大夫」を分析している。合わせてDBも作成し、鴎外の執筆脳の活動を感情として、「鴎外と感情」というシナジーのメタファーについて考察した。 
 思考は、課題や問題が与えられたときに生じる一連の精神活動の流れで、周囲の状況に応じた現実的な判断とか結論へ至るものである。花村(2015)では、意識と無意識そして思考といった精神活動を調べながら、魯迅の「阿Q正伝」や「狂人日記」を考察し、その結果、「魯迅とカオス」というシナジーのメタファーを作ることができた。
 意欲は、人が何かの行動を起こすとき、欲求や衝動、願望などが行動の動機づけとなって、意味や目的を持って行動しようとする意志の働きである。この行動を制御する意志と欲求を合わせて意欲といい、物事を積極的に行おうとする精神作用を指す。食欲、性欲、睡眠などがその例である。
 判断は、物事の真偽、善悪、美醜などを考え決めることであり、知能は、人間が環境に適応していく能力を表し、理解、思考、判断などの総合的な能力のことをいう。知能の障害は、精神の遅延や認知症などでみられる。(日本成人病予防協会2014)

表1 人間の精神的な活動
人間の精神活動 言語
説明 人間が情報を伝達する際に用いるツールの一つ。
人間の精神活動 記憶
説明 新情報を受け入れて既存の情報と調節しながら、必要なものを蓄える。その際、長期と短期のものがある。
人間の精神活動 感情
説明 本能のことをいう情動と人間特有の感情といえる畏敬があり、時間的な見方をすると、情動は瞬間的な思いであり、畏敬は継続的な思いになる。また、感情には喜怒哀楽のようにどちらにも入るものがある。
人間の精神活動 思考
説明 課題や問題が与えられたときに生じる一連の精神活動の流れで、周囲の状況に応じた現実的な判断とか結論へ至るものである。
人間の精神活動 意欲
説明 人が何かの行動を起こすとき、欲求や衝動、願望などが行動の動機づけとなり、意味や目的を持って行動しようとする意志の働きである。
人間の精神活動 判断
説明 物事の真偽、善悪、美醜などを考え決めること。
人間の精神活動 知能(適応能力)
説明 人間が環境に適応していく能力を表し、理解、思考、判断などの総合的な能力のことをいう。

 この小論では、特に、意欲と適応能力に焦点を当てて、ゴーディマの執筆脳について考察していく。ゴーディマが「ブルジョワ時代の終わりに」を書いた1960年代前半の南アフリカは、厳しい弾圧の時代であり、いくら適用能力があっても、政治や法律によりそれを発揮できなかった。従って、心の働きでは意欲が強くなり、それに伴う意志の働きも含めた前頭前野皮質の活動が論点になる。
前頭連合野は、側頭葉、頭頂葉、後頭葉などの連合野から記憶の情報を統合して適した行動を生み出すため、考察の対象にする。そこには、IQ(知能指数)やEQ(心の知能指数)そしてPQ(前頭葉の知能指数)のような指数を測る概念もある。

花村嘉英(2018)「『ブルジョワ世界の終わりに』から見たゴーディマの意欲について」より


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