ヘルマン・ヘッセの“Schön ist die Jugend”で執筆脳を考える2


2 ヘッセの“Schön ist die Jugend”のLのストーリー

 ヘルマン・ヘッセ(1877-1962)の“Schön ist die Jugend” (青春は美わし)は、1916年にFischerから出版された。立派な人になろうと社会の中で自分の居場所を探してから、故郷にある両親の家に戻る青年時代の自分を題材にしている。外国のとある場所に出かける前の、過ぎ去る夏の数か月が描かれている。詳細で和やかで気持ちのいいことばを用いて子供時代の思い出や健全な家族の安心感を描き、危機と痛みの時代を忍耐強く形にした。
 しかし、感情豊かな物語は、当時のヘッセの生活状況と極端に対立している。1916年、父の死や夫人の発病により結婚生活が崩れ、末の息子も病気になった。第一次世界大戦のさなかドイツの捕虜救援機関でも働いた。戦争に対する不安やストレスも強く、精神障害を発症し、ユング学派のL.B.Langの下で精神分析の治療を受ける。この精神分析が内面の葛藤を表現できるようにことばを開示し、佐藤(1979)によると、ヘッセの作品の構成や展開に重要な役割を果たしている。以降、ヘッセの作風に変化がみられたのも当然である。

花村嘉英(2020)「ヘルマン・ヘッセの“Schön ist die Jugend”の執筆脳について」より


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