アブドゥル・グルナの“Memory of departure”(出発の記憶)で執筆脳を考える3


 ナイロビの鉄道の駅は大きい。ブワナ・アーメド・ビン・カリファが昼食のために帰宅する。(P.102)昼食後、オマルは、皆が町へ行ったとき部屋に残り、実家にいたら何をしているか考え、両親のことや出発時の興奮した様子を思い出した。(P.106)個人の意識が存在するエピソード記憶である。
 記憶については動的な記憶の分析を考える。(花村2023)例えば、長期記憶は、頭で覚える陳述記憶と体で覚える非陳述記憶に分けられ、陳述記憶は、エピソード記憶と意味記憶に分けられる。エピソード記憶は、未来も含めた個人の経験にまつわる出来事と関連し、意味記憶は、一般的な知識と関連する。また、非陳述記憶のうち手続き記憶は、自転車の運転とかタイピングと関連する。 
 長期記憶の分類にプライミング記憶を加えることがある。プライミング記憶は、先行情報が後から与えられた情報に影響を及ぼす効果を持っている。しかし、無意識によりパターン化されるため、勘違いの原因になることもある。
 給仕係のアリは、30代の痩せた男。叔父の娘のサルマと食事やコーヒーのサービスをしてくれる。サルマは、高校を卒業し本屋で働いている。来年にはナイロビ大学に進学する予定である。(P.122)
 差別を感じるかどうか。(P.123)街ではアイスクリームが食べられる。サルマは、マリアムのためにスカーフを買う。ボフロと聞いて急に故郷の記憶が蘇る。エピソード記憶である。マリアムは、芸術史で博士論文を書いている友人。モーゼスの名は誰も知らない。(P.133)確かに海岸から来たものは金がある。しかし、ハッサンが勘違いしている。プライミング記憶。個人の意識が介在しない潜在記憶である。  
 アリが腕にけがしている。肘の骨が見えている。(P.136)フラストレーション。叔父は、中古車ビジネス、冷蔵庫店、肉屋の経営者である。(P.139)ビジネス仲間にモーゼスがいた。私とは久しぶりの感がある。彼は、大学関係ではなく一般のビジネスまたは裏取引に関わっている。(P.143)小さい子供は気が狂ってアラブ人に売られる。(P.151)ポストコロニアル。 

花村嘉英(2023)「アブドゥル・グルナの“Memory of departure”(出発の記憶)で執筆脳を考える」より


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