人文科学から始める技術文の翻訳19


6 まとめ

 翻訳の作業単位は、言語の組み合わせと分野の調節からなっている。文系の人もことばのみならず、理系の技術文の実績を作ることにより、主の専門以外に副専攻としてシナジーの研究にも取り組むことができる。
 この調節がスムーズにできるようになると、文献処理の技が文学作品の分析にも適用できると思われる。私が取り組むシナジーの文学分析は、縦に受容の読みからなる読者の脳の活動があり、横にシナジーの読みからなる作家の脳の活動がある。日頃から縦の専門と認知科学も交えて比較とシナジーという副専攻を調節するように頭を使うと、マクロの世界が見えてくる。マクロの調節方法が決まれば、自ずと発見発明につながっていく。
 翻訳は、書き手にも読み手にも気を使いながら作業を進めていくために、ライティングの際の脳の活動について考察する機会を与えてくれる。その際に考えたことを作家のライティング時の活動を探るための土台にするのはどうだろうか。そのための翻訳作業と思えば、ライフワークと言えるようになる。

【参考文献】

(1)花村嘉英(2005)計算文学入門-Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風舎
(2)熊野明(2011)中国語特許翻訳を支援する機械翻訳技術JaploYEAR BOOK 2011 254-257
(3)知財翻訳研究所編(1999)特許翻訳講座 テキスト・資料
(4)富井篤(1996)技術英語構文辞典 三省堂
(5)中野幾雄(1996)動詞で決まる技術英語 工業調査会
(6)日経BP知財http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/gov/arai20050613.html

花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より

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