人文科学から始める技術文の翻訳14


 次の文は、牽引ロープ一式のエレベーターに関する明細書の一部分である。特許の根底にある課題の説明のため、課題は何かがつかめるように訳出するとよい。

【独文】
(9)Vorliegenden Erfindung liegt die Aufgabe zugrunde, den Seilaufzug des Hauptpatentes dahingehend zu verbessern, daß die Möglichkeit besteht, die Antriebseinheit mit ihrem Betonsockel in jeder beliebigen Etage eiens Gebäudes anzuordnen, und daß die Zugseile des Gegengewichtes nicht durch Löcher im Betonsockel hindurch eingefädelt werden müssen.(ドイツ連邦共和国特許庁 公開資料19752232 A1)
 
①用語
Seilaufzug(ロープ式エレベーター)、Antriebseinheit(駆動装置)、Betonsockel(コンクリート台)、Gegengewicht(対重、つり合いの重り)、einfädeln(針穴に糸を通す)。

②構文
主文と従属の関係になる二つのdaß文を従えていて、dahingehendがこれらの従属文を調節する副詞として効いてくる。

③英語に準ずる考察 表12
2段階の処理法 例えば、二つ目のdaß文の主部「die Zugseile des Gegengewichtes」は「対重をロープで牽引すると」にする。述部は「ロープがコンクリート台を通らなければならない」にする。
態の用法 受動態、日本語はできるだけ能動態で書く。
否定構文 「nicht durch Löcher」は「穴を通らなくてもよい」と名詞を否定している。
時制 現在形

全体の訳は次のようになる。

【和訳】
(10)提出された本発明の根底には、コンクリート台の付いた駆動装置を建物の任意の階に配置でき、対重をロープで牽引するとコンクリート台の穴を通らなくてもよいように主な特許のロープ式エレベーターを改良するという課題がある。

花村嘉英(2015)「人文科学から始める技術文の翻訳」より

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