イディオム-モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ22


注釈

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*MGの解説書としては、Gebauer(1978)、Dowty, Wall and Peters(1981)、白井(1985)などがある。

*GPSGの解説には、Naumann(1988)、Uszkoreit(1987)、池谷(1988)などがある。

*この論文では、慣用句(Phraseologie)の基準といえるイディオム性(Idiomatizität)、安定性(Stabilität)、語彙化(Lexikalisierung)、および再生(Reproduzierbarkeit)の中で、特に、イディオム性の高い表現を指してイディオムと呼ぶ。(Fleischer 1982. S. 34)イディオム性とは、個々の構成要素の意味と全体の意味との不規則な関係であり、安定性とは、構成要素の交換の難しさを指し、語彙化とは意味に関する辞書的な扱いであり、語彙化とともに統語上固定したと語彙的な単位を指す。 

*Head-Driven Phrase Structure Grammarの略。Carl PollardとIvan Sagにより、1980年代後半から1990年代前半にかけて開発された文法理論で、Gerald Gazdarらが1970年代後半から1980年代前半にかけて開発したGPSGの流れを継承している。GPSGは、 ChomskyのGB (Government and Binding)理論とRichard Montague のPTQをそれぞれ統語論と意味論に採用した言語理論で世界中 から注目を集めた。HPSGは、可能世界を設定するPTQの代わりにその中身を詳 細に追及していく状況意味論を採用し、意味論の説明力を向上 させた。GPSGとの主な違いについては、呼応の処理が一例になる。

*カテゴリー文法の解説の一つにAjdukiewicz(1967)がある。その中で、基本的なカテゴリーといえる文(s)および名詞(n)と複合的なカテゴリーs/nnは区別され、これらの操作するための規則として、相殺(s/nn→s/n)を持つUCG(Unidirectional Categorial Grammar)が提唱されている(ibid. S.213)。PTQは、この手法を継承する。カテゴリー文法の歴史に関する詳細な説明は、Casaudio(1988)にある。

*Montague(1974)S.249。

*(2)S2のような統語規則と統語操作の区別の意義については、Dowty(1982)による説明がある。彼は、主語や目的語に対応する文法概念は、個別言語から離れて、一般的に規定されるとし、例えば、「主語-述語」規則としてS3:<IV, T>,t>を設け、その入力IV(動詞句)、T(名詞句)、その出力t(文)およびこれらを取り持つ統語操作F2のカテゴリー的な指定を普遍的な役割としてS3に課している。

 これに対して、言語間で異なるのは統語操作Fであり、英語(SVO)と日本語(SOV)などの語順の違いは、F2により説明される。このように、統語規則と統語操作の区別を含む統語規則S3により、IVの語句と結びつけられる名詞句は、主語と定義される(ibid. S. 84)。

花村嘉英(2022)「イディオム-モンタギュー文法からGPSGそしてHPSGへ」より

シナジーのメタファー1


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