モンタギュー文法の意味公準について考える-階層的な様相表現を中心にして14


4 階層的な様相

4.1 階層的な様相表現の意味制約

 同一グループの様相の強弱関係に依存する自然言語の意味上の制約に関する問題は、上述したような表記法では、説明できない。

(15)a Paul muß spazierengehen und Maria muß auch.
(15)b Paul muß spazierengehen und Maria kann auch.
(15)c Paul kann spazierengehen und Maria kann auch.
*(15)d Paul kann spazierengehen und Maria muß auch.

(16)a Paul muß antworten und Maria muß auch.
(16)b Paul muß antworten und Maria darf auch.
(16)c Paul darf antworten und Maria darf auch.
*(16)d Paul darf antworten und Maria muß auch.

 (15)で示されているmüssenとkönnenの読みは、それぞれ必然と可能となり、認識的(真理値的)な様相を表している。また、(16)で示されているmüssenとdürfenの読みは、それぞれ義務と許可となり、義務的な様相を表している。認識的とは、可能性の度合いを表す階層的な様相といえる。即ち、その度合いが強ければ、必然と義務が、弱ければ、可能と許可が出る。ここで問題になるのは、(15)dと(16)dである。これらが可能性の強弱または義務の遂行性の度合いと動詞省略の間に存在する次のような意味上の矛盾条件に該当するためである。

花村嘉英(2022)「モンタギュー文法の意味公準について考える-階層的な様相表現を中心にして」より

シナジーのメタファー1


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