森鴎外の「山椒大夫」のデータベース化とその分析5


【連想分析2】

情報の認知1(感覚情報)

 感覚器官からの情報に注目することから、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。このプロセルのカラムの特徴は、①ベースとプロファイル、②グループ化、③条件反射である。

情報の認知2(記憶と学習)

 外部からの情報を既存の知識構造へ組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。未知の情報はまたカテゴリー化される。このプロセスは、経験を通した学習になる。このプロセルのカラムの特徴は、①旧情報、②新情報である。

情報の認知3(計画、問題解決、推論)

 受け取った情報は、計画を立てるプロセスでも役に立つ。その際、目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。しかし、獲得した情報が完全でない場合は、推論が必要になる。このプロセルのカラムの特徴は、①計画から問題解決へ、②問題未解決から推論へである。

[安寿と厨子王が山椒大夫の下で働く場面] 感情と行動の認知プロセス
A そこでまた落ち葉の上にすわって、山でさえこんなに寒い、浜辺に行った姉さまは、さぞ潮風が寒かろうと、ひとり涙をこぼしていた。
情報の認知1,3 情報の認知2,1 情報の認知3,2
B 日がよほど昇ってから、柴を背負って麓へ降りる、ほかの樵が通りかかって、「お前も大夫のところの奴か、柴は日に何荷苅るのか」と問うた。
情報の認知1,3 情報の認知2,2 情報の認知3,2
C 「日に三荷苅るはずの柴を、まだ少しも苅りませぬ」と厨子王は正直に言った。
情報の認知1,3 情報の認知2,1 情報の認知3,2
D 「日に三荷の柴ならば、午までに二荷苅るがいい。柴はこうして苅るものじゃ。」樵は我が荷をおろして置いて、すぐに一荷苅ってくれた。
情報の認知1,1 情報の認知2,2 情報の認知3,1
E 厨子王は気を取り直して、ようよう午までに一荷苅り、午からまた一荷苅った。
情報の認知1,1 情報の認知2,2 情報の認知3,1

A:情報の認知1は③条件反射、情報の認知2は①旧情報、情報の認知3は②問題未解決から推論へである。
B:情報の認知1は③条件反射、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は②問題未解決から推論へである。
C:情報の認知1は③条件反射、情報の認知2は①旧情報、情報の認知3は②問題未解決から推論へである。
D:情報の認知1は①ベースとプロファイル、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は①計画から問題解決へである。
E:情報の認知1は①ベースとプロファイル、情報の認知2は②新情報、情報の認知3は①計画から問題解決へである。

結果

 厨子王はこの場面で、条件反射的に外部から情報を取り込み、問題未解決から問題解決へ向かっている。そのため感情と行動という組が相互に作用する。

花村嘉英(2017)「日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで」より

日本語教育のためのプログラム


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