3.3 甘利を打つ
源太夫はこういう話をした。甚五郎は鷺を撃つとき蜂谷と賭をした。蜂谷は身につけているものを何なりとも賭けようと言った。A2B2
甚五郎は運よく鷺を撃ったので、ふだん望みをかけていた蜂谷の大小をもらおうと言った。A2B2
それもただもらうのではない。代わりに自分の大小をやろうというのである。A2B2
しかし、蜂谷は、この金熨斗付きの大小は蜂谷家で由緒のある品だからやらぬと言った。A2B2
甚五郎はきかなんだ。「武士は誓言をしたからは、一命をもすてる。よしや由緒があろうとも、おぬしの身に着けている物の中で、わしが望むのは大小ばかりじゃ。ぜひくれい」と言った。A2B2
「いや、そうはならぬ。命ならいかにも棄ちょう。家の重宝は命にも換えられぬ」と蜂谷は言った。A2B2
「誓言を反古(ほご)にする犬侍め」と甚五郎がののしると、蜂谷は怒って刀を抜こうとした。A2B2
甚五郎は当身を食わせた。A2B2
それきり蜂谷は息を吹き返さなかった。A1B1
平生何事か言い出すとあとへ引かぬ甚五郎は、とうとう蜂谷の大小を取って、自分の大小を代りに残して立ち退いたというのである。A2B1
◆相関係数は、次の公式で求めることができる。
相関係数=[(A-Aの平均値)x(B-Bの平均値)]の和/
√(A-Aの平均値)2の和x(B-Bの平均値)2の和
上記計算表を代入すると、
相関係数 = -24/√32 x 18 = -24/√576 = -24/2 4= -1
従って、強い負の相関があるといえる。
花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-森鴎外」より