2 統計処理-バラツキ
2.1 データの抽出
作成したDBから2つの特性からなるカラムを抽出し、標準偏差によるバラツキを調べてみる。例えば、A:思考の流れ(1外から内の誘発と2内から外の創発)、B:ジェスチャー(1直示と2隠喩)、C:情報の認知プロセス(1旧情報と2新情報)、D:情報の認知プロセス(1問題解決と2未解決)というように文系と理系のカラムをそれぞれ2つずつ抽出する。
◆場面1 鷺を打つ
とある広い沼のはるか向うに、鷺が一羽おりていた。銀色に光る水が一筋うねっている側の黒ずんだ土の上に、鷺は綿を一つまみ投げたように見えている。 A1B2C2D2
ふと小姓の一人が、あれが撃てるだろうかと言い出したが、衆議は所詮打てぬということにきまった。 A1B1C2D1
甚五郎は最初黙って聞いていたが、皆が撃てぬと言い切ったあとで、独語のように「なに撃てぬにも限らぬ」とつぶやいた。 A2B2C1D2
それを蜂谷という小姓(こしょう)が聞き咎めて、「おぬし一人がそう思うなら、撃ってみるがよい」と言った。 A1B1C1D2
「随分撃ってみてもよいが、何か賭けるか」と甚五郎が言うと、蜂谷が「今ここに持っている物をなんでも賭きょう」と言った。 A2B1C1D2
「よし、そんなら撃ってみる」と言って、甚五郎は信康の前に出て許しを請うた。 A2B1C2D2
信康は興ある事と思って、足軽に持たせていた鉄砲を取り寄せて甚五郎に渡した。 A1B1C2D2
「あたるもあたらぬも運じゃ。はずれたら笑うまいぞ」甚五郎はこう言っておいて、少しもためらわずに撃ち放した。 A2B1C2D1
上下こぞって息をつめて見ていた鷺は、羽を広げて飛び立ちそうに見えたが、そのまま黒ずんだ土の上に、綿一つまみほどの白い形をして残った。 A1B1C2D1
信康を始めとして、一同覚えず声をあげてほめた。田舟を借りて鷺を取りに行く足軽をあとに残して、一同は館へ帰った。 A1B1C2D1
花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること-森鴎外」より