フローレンスの子供ベッキの友人ジョンが大けがをする。皆が病院に見舞いに行くも、カレンとヴァーキュールは、車に残る。ヴァーキュールは、末期がんであることを娘に告げるように勧める。
フローレンスのいとこタバネに会うため、カレンとフローレンスは、ググルトに行く。叫びや死体が渦巻く地域で、カレンは、発作を起こす。そこでベッキと黒人たちが口に砂を含み壁の横で寝ているのを見た。白人の社会で生きて来たカレンが知らない世界である。鉄がカレンやケープタウンの人々の粗雑で野蛮な生活を表現している。フローレンスも鉄に似ていて、子供たちもやはり鉄の子供たちである(P.50)。野蛮であることは、大部分のケープタウンの人々の気質である。すべての歴史の時代と同様に、野蛮と人種差別は、ある時終結することになる(P.68)。
カレンは、自殺も考える。ヴァーキュールは、リキュールを買い、飲むように勧める。カレンは、拒絶するも、ベッキに尋ねながらジョンを探す。何かを隠している。次の日、警察がジョンを探しに来る。カレンが混乱する間、ジョンは射殺される。カレンは、通りをさ迷い歩く。ヴァーキュールは彼女を見つけ、木の中で共に休息する。カレンには激しい痛みが襲う。
がんが進行しているため(P.155)、体が急速に衰え、悪夢にうなされる。ヴァーキュールは、繰り返し生命を絶つように勧める。二人は、ベッドを共にしはじめる。精神的な恋愛である。あるとても寒い日に彼女が起きた時、今日がその日かどうか尋ねる。ヴァーキュールは、ベッドに入り彼女を抱擁する(P.198)。人種の壁を越えて。カレンの最後の言葉は、もう温まることができないである。
クッツェーは、この小説の中に重要なテーマを置いている。年を取る、死、英雄としての告白者、語りの表現、自由の意味、人の組合、親しい関係や南アフリカの白人リベラルの位置などである。
そこで、「鉄の時代」の購読脳は、「末期がんと精神的な愛」にし、野蛮と人種差別というアパルトヘイトの時代がやがて終わることを強調しているため、執筆脳は「白人リベラルと精神の葛藤」にする。「鉄の時代」のシナジーのメタファーは、「クッツェーと病気や社会がもたらす心の問題」である。
花村嘉英(2020)「クッツェーの『Age of Iron(鉄の時代)』の執筆脳について」より